地域在住高齢者における肉類摂取とフレイル関連指標の検討は不十分
東京都健康長寿医療センターは4月20日、地域在住高齢者(お達者健診参加者512人)を対象に食肉の摂取量とさまざまなフレイル関連指標との関わりを横断的に検討した結果、食肉を多く摂取している高齢者は最大歩行速度が速いことを確認したと発表した。この研究は、同センター研究所自立促進と精神保健研究チームの本川佳子氏らが、日本ハム株式会社との共同研究として行ったもの。研究成果は、「日本サルコペニア・フレイル学会誌」にオンライン掲載されている。
今後さらなる高齢化が見込まれる日本において、要介護の前段階であるフレイル対策は喫緊の課題だ。フレイル対策の食事としては、タンパク質を不足させないことが重要である。タンパク質の主要な摂取源のひとつである肉類は、年齢階級が上がるとともに摂取量が減少しやすい食品。肉類はアミノ酸スコアが高いことや、肉類に含まれるイミダゾールジペプチドは膝伸展力・片足開眼立ちの向上に関連することが報告され、十分な肉類摂取はフレイル予防に効果的であると考えられる。しかし、これまでに地域在住高齢者における肉類摂取とフレイル関連指標についての検討は十分ではない。
お達者健診参加の高齢者512人対象、食肉摂取量で3群に分けフレイル指標検討
そこで今回の研究では、肉類摂取量とフレイル関連因子との関わりを明らかにすることを目的に調査を行った。調査では、東京都健康長寿医療センター研究所で実施するお達者健診に参加した高齢者512人を分析対象とした。健診では、聞き取りによる基本情報の調査、食事調査、血清アルブミン値の測定、歩行速度、握力、身体組成の測定を実施。食肉の摂取量(エネルギーベース)により3グループに分け、フレイルに関連する指標との検討を行った。
肉類摂取量「多」グループ、最大歩行速度が最も速い
研究の結果、肉類摂取量の多いグループで最大歩行速度が最も速くなった。さらに詳細な分析を行ったところ、性、年齢等を調整しても肉類摂取量の多い方で最大歩行速度が速いことが認められた。
フレイル予防のためにタンパク質の積極的な摂取が推奨されているが、「どのような食品からタンパク質を摂るべきか」に着目した研究は不十分だ。今回の研究では、高齢期のフレイル予防の栄養ケアとして肉類が有効である可能性を示すことができた、と研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター プレスリリース