X染色体上のCASK遺伝子異常で発症、小脳低形成のメカニズムは不明
信州大学は4月18日、小脳の低形成を伴う神経発達障害であるCASK異常症(小児慢性特定疾病に指定)の病態メカニズムの一端を解明したと発表した。この研究は、同大先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所ニューロヘルスイノベーション部門/医学部分子細胞生理学教室の田渕克彦教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cells」に掲載されている。
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CASK異常症は、X染色体上に位置するCASK遺伝子の異常により発症することが知られているが、CASK異常症で小脳低形成が起こるメカニズムは不明であり、現在のところ治療法が存在しない。この問題に対処するために、小脳低形成の病態原理や分子メカニズムを解明することが必要とされている。
小脳顆粒細胞でアポトーシスが起こると発見、シナプスのLiprin-α2との結合阻害が関与
研究グループは、CASKノックアウトマウスをCASK異常症の疾患モデルとして解析を行った。このマウスの小脳では、小脳顆粒細胞が時間とともに減少し、培養系を用いた実験で、CASK欠損によりこれらの細胞がアポトーシスを起こしていることを見出した。さまざまな遺伝子変異を有するCASKをこれらの細胞に導入する実験を行った結果、CASKのCaMキナーゼ内にある複数のミスセンス変異で小脳顆粒細胞のアポトーシスがレスキューできないことを見出し、AI技術を用いたタンパク質の3次元構造解析により、これらの変異が、シナプスタンパク質であるLiprin-α2との結合を阻害していることを見出した。
今回の発見はCASK異常症の小脳顆粒細胞死のメカニズムとして、Liprin-α2が関与していることを示す初めての報告であり、CASK異常症に対する治療法開発に光明をもたらすことが期待される。「今後は、この知見に基づいた治療法の開発やLiprin-α2の機能解析、さらなる分子メカニズムの解明に取り組んでいく予定である」と、研究グループは述べている。
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