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脳波など微弱生体シグナルを無線計測可能な電子皮膚を開発-阪大

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2023年04月19日 AM10:41

、プラスチック製では皮膚密着性や通気性などに課題

大阪大学は4月18日、木材由来のセルロースナノファイバー紙()を用いて、人の微弱な生体シグナル(脳波、心電、筋電など)を無線計測可能な電子皮膚(e-skin)を開発したと発表した。この研究は、同大産業科学研究所の黄茵彤氏、荒木徹平准教授、古賀大尚准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Advanced Materials Interfaces」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

e-skinは、電気的・化学的な生体シグナル計測が可能なウェアラブルデバイスとして、疾患の早期発見や術後状態のモニタリングへの活用が期待されている。現在は、プラスチック基材を用いたe-skinの開発が盛んに行われている。理想的なe-skinには、機能やSDGsの観点から、機械的柔軟性、皮膚適合性、皮膚密着性、通気性、滅菌処理耐性、生分解性、持続生産性といった多くの特性が求められる。しかしこれまでのプラスチック製e-skinでは、これらの特性を全て満たすことは困難だった。

木材由来のセルロースナノファイバー紙を使用

研究グループは、木材セルロースナノファイバー由来の紙(ナノペーパー)を用いてこの難題に取り組んだ。機械的柔軟性、生体適合性、生分解性、持続生産性を持つナノペーパーは、プラスチックに替わる新基材として注目を集めている。従来のナノペーパーには、緻密な構造を持つため肝心の皮膚密着性と通気性が低いという問題が見つかっていた。そこで、ナノペーパーに多孔質ナノ構造を設計し、高い皮膚密着性(せん断保持力:2.3 N/cm2)と高い通気性(水蒸気透過性:2,912g/m2/day)を同時に発現させることに成功した。そして、多孔質ナノペーパー基材(厚さ:25μm)に電極(厚さ:15nm)を実装し、e-skinを作製した。

3時間以上貼付、熱による滅菌処理、繰り返し利用が可能

開発したナノペーパー製e-skinは、簡単な前処理後に皮膚に貼り付けると、皮膚の微細なしわに沿って変形しながらしっかりと密着する。この優れた皮膚密着性によって、脳波、心電、筋電といった人の微弱な生体シグナルも効果的に無線計測することができた。すなわち、認知症やてんかん、心臓疾患、筋肉・神経疾患などの診療への応用が期待される低ノイズ計測システムが実現した。

ナノペーパー製e-skinは皮膚に3時間以上貼付可能で、しわ寄せを100回繰り返しても皮膚への密着を保つことができた。さらに、皮膚への刺激も見られなかったことから、長時間の生体シグナルモニタリングにも適していることがわかった。また、皮膚の動きに対しては高い密着性を保つ一方で、痛みなく剥がすことができ、熱による滅菌処理と繰り返し利用が可能であることも実証した。

他の研究を組み合わせた、より高度な環境配慮型e-skin開発に期待

開発したナノペーパー製e-skinは、理想的なe-skinに求められる特性を満たしており、生体・環境調和性の次世代医療・ヘルスケアデバイスとなることが期待される。

荒木准教授らの研究グループは、これまでに有機電気化学トランジスタや、有機電界効果トランジスタを中心に、薄膜・伸縮・透明デバイスなどを開発し、ヒトのストレスをモニタリングするためのシート型センサシステムを開発してきた。古賀准教授らの研究グループは、ナノペーパーのデバイス基材応用に加えて、ナノペーパーの半導体化やナノペーパーへのCO2レーザー照射による微細配線作製に取り組んできている。「近い将来、これらの技術を組み合わせることで、より高度な環境配慮型e-skinを開発するなど、医療・ヘルスケアデバイスの開発をカーボンニュートラルな方向へ転換していきたい」と、研究グループは述べている。

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