ゾルベツキシマブ、Claudin18.2を標的とするキメラIgG1モノクローナル抗体
アステラス製薬株式会社は4月17日、Claudin 18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療薬として開発中であるゾルベツキシマブについて、「ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ホリナート、フルオロウラシルを組み合わせた療法)」の有効性と安全性を評価した第3相SPOTLIGHT試験の結果が「The Lancet」に掲載されたことを発表した。同試験の結果は、2023年米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(American Society of Clinical Oncology(ASCO) Gastrointestinal(GI) Cancers Symposium)でも発表されている。
ゾルベツキシマブは、開発中の、膜貫通型タンパク質Claudin18.2を標的として結合するキメラIgG1モノクローナル抗体である。がん細胞表面の胃上皮細胞のClaudin18.2に結合することによって作用する。この結合相互作用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)と補体依存性細胞傷害(CDC)という2つの異なる免疫系経路を活性化することにより、がん細胞死を誘導する。ゾルベツキシマブの安全性と有効性は、胃腺がん、食道胃接合部腺がん、膵臓腺がんにおいて現在検証中だ。
対象はClaudin18.2陽性/HER2陰性、切除不能または転移性の胃がんと食道胃接合部がん
SPOTLIGHT試験(NCT03504397)は、Claudin18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ(IMAB362)+mFOLFOX6療法群と、プラセボ+mFOLFOX6療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第3相試験。この試験には、米国、カナダ、英国、オーストラリア、欧州、南米、日本を含むアジアの215か所の施設で565人の患者が登録された。
主要評価項目は、プラセボ+mFOLFOX6療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法群の無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)。副次評価項目には、全生存期間(Overall Survival:OS)、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、生活の質(Quality of Life:QOL)に関するパラメーターが含まれる。試験の結果、PFSおよびOSのいずれも達成した。
CAPOX療法との併用療法を別試験で評価
ゾルベツキシマブについては、第3相GLOW試験(NCT03653507)も行われている。同試験はClaudin18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ(IMAB362)+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第3相試験。この試験には、米国、カナダ、英国、欧州、南米、日本を含むアジアの166か所の施設で507人の患者が登録された。主要評価項目は、プラセボ+CAPOX療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法群のPFS。副次評価項目には、OS、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、QOLに関するパラメーターが含まれる。
SPOTLIGHT試験およびGLOW試験において、スクリーニングされた患者の約38%が、免疫組織化学染色において腫瘍細胞の75%以上で中等度から強度の染色強度を示す、Claudin18.2陽性のがんだった。
同社は、「ゾルベツキシマブは、承認された場合、ファーストインクラスの抗Claudin18.2モノクローナル抗体となる可能性がある。今後、SPOTLIGHT試験およびGLOW試験の結果に基づき、グローバルで規制当局への承認申請を行う予定だ」としている。
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・アステラス製薬 プレスリリース