承認済みエクソン53スキップ薬に続く2番目の開発薬、エクソン44スキップ薬
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は4月14日、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬のアンチセンス核酸医薬品(NS-089/NCNP-02)について、米国食品医薬品局(FDA)と第2相試験の治験計画の合意に至ったと発表した。この研究は、日本新薬株式会社との共同研究グループによるもの。
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DMDは、筋肉細胞を支えるジストロフィンタンパク質の欠損が原因で、骨格筋、心筋、肺の筋力低下を引き起こす進行性の筋ジストロフィー。DMDにはさまざまな遺伝子変異型があり、NS-089/NCNP-02の投与対象となるのは、エクソン44スキッピングにより治療可能な遺伝子変異が確認されたDMD患者だ。
エクソン・スキップ治療は、アンチセンス核酸と呼ばれる短い合成核酸を用いて、メッセンジャーRNA前駆体から成熟メッセンジャーRNAが作られる過程で、タンパク質に翻訳されるエクソン領域の一部を人為的に取り除く(スキップする)ことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正する(イン・フレーム化)治療法である。この結果、正常なジストロフィンに比べるとタンパク質の一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンが発現して筋機能の改善が期待される。この治療でスキップの対象となるエクソンは、患者の変異形式に応じて異なる。現在までに、日本では、NCNPと日本新薬が共同で見出したNS-065/NCNP-01を有効成分としたエクソン53スキップ薬ビルテプソ(R)点滴静注250mgが製造販売承認を取得している。一方、エクソン53スキップ薬が適応にならない患者に対して、別のエクソンを標的とした薬剤の開発が喫緊の課題となっている。今回の研究で扱うNS-089/NCNP-02は、NS-065/NCNP-01に続く2番目の開発品目となる。
エクソン44スキップに応答の変異を有するDMD患者細胞で有効性確認済み
NS-089/NCNP-02は、NCNPと日本新薬が共同で開発した世界初のエクソン44スキップ薬。モルフォリノ核酸が本来有する高い安全性に加えて、特許出願技術である新規高活性配列探索法を用いて開発した配列連結型のモルフォリノ核酸製剤であり、高いエクソン・スキップ活性を有している。これまでに得られた非臨床試験の結果より、エクソン44スキップに応答する変異形式のDMD患者細胞における有効性が確認されている。
医師主導治験では、ジストロフィンタンパク質発現を平均15.79%回復
また、NCNP病院と鹿児島大学病院で実施した医師主導治験の結果からは、平均15.79%のジストロフィンタンパク質の発現の回復が認められた。ノース・スター歩行能力評価スコアを含め、運動機能の維持または改善傾向が示唆されており、同剤のDMDに対する治療効果が期待されている。
米国での開発は、日本新薬の米国子会社NS Pharma,Incが実施する予定。なお、日本国内においても、日本新薬は医師主導治験に参加した6人を対象とした継続投与試験を実施中だ。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース