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新型コロナに対するステロイド・パルス療法と院内死亡リスクの関連を解明-阪大ほか

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2023年04月14日 AM10:59

ステロイドの適正用量、専門家の中でも意見が相違

大阪大学は4月12日、大容量一括ステロイド静脈投与()は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化患者の院内死亡リスク改善に有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の坂庭嶺人助教(社会医学講座公衆衛生学)らの研究グループによるもの。研究成果は「Critical Care」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

2020年の初頭から続くCOVID-19大流行に伴い、この未知のウイルスに対する有効な治療法の開発および探索が世界的に進められてきた。イギリスが国家を挙げて実施した大規模臨床研究では、小容量のステロイドの有効性(今回の研究では、メチルプレドニゾロン約40㎎に相当)が認められたが、ステロイドは免疫力低下などの副作用も非常に強い薬剤でもあり、中容量以上のステロイド治療についてはかえって死亡リスクを上昇させる恐れも懸念されており、適切な投与量・投与方法について専門家の中でも意見が割れていた。この答えのでない原因の大きな一因は、COVID-19に対する治療評価は大きなバイアスが生じやすく、正確な評価そのものが非常に困難だったことが挙げられる。

2023年現在、変異株の弱毒化によりCOVID-19患者の重症化率・軽症者を含む全体の致死率は下がっているが、感染者数の大幅な増加に伴い1か月当たりの重症化患者は依然高く、死亡数も日本国内においても増加の傾向にある。これらのことからもCOVID-19重症化患者に対する科学的エビデンス構築はいまだ世界的にも重要かつ急務の課題となっている。

入院患者約6万7,000人分につき、最新分析法でバイアスを正確に除去・評価

今回研究グループは、日本全国のCOVID-19入院患者約6万7,000人の医療データを最新の分析技術cloning, censoring, weighting method for marginal structural modelによって詳細に分析した。この分析技術は、Marginal Structural Modelを臨床応用したもの。研究では、1)ステロイド・パルス療法を実施するに至る患者の特徴、2)入院からステロイドを投与するまでの時期と投与量、3)ステロイド投与前後の他の薬剤などの治療状況、4)投与してから院内死亡または退院までの期間、などの違いから生じるバイアスを、正確に除去・臨床評価した。

重症患者の院内死亡リスクは改善、軽症患者で死亡リスク増

気管支挿管を必要とするような重症化患者において、ステロイド・パルス療法(研究では、メチルプレドニゾロン換算として500㎎以上のステロイド一括投与を指す)は、小容量のステロイド療法に比べて約40~30%、ステロイドを用いない場合に比べて約50%の院内死亡リスクの改善が認められた。また、気管支挿管とステロイド・パルス療法開始の間隔が短いほど、より死亡リスクが減少することもわかった。その一方で、比較的軽症患者に対するステロイド・パルス療法はかえって死亡リスクを増加してしまうということも明らかになった。

さらに興味深いことに、バイアスを取り除かない状態の単純集計では、ステロイド・パルス療法を用いた場合の院内死亡はステロイド投与をしなかった患者群よりも高いという真逆の結果となった。このことから、COVID-19の治療成績に関する研究では、より慎重な分析と結果の吟味が必要であることも示唆された。

発展途上国などでも研究成果が生かされることに期待

研究成果は、COVID-19重症化患者に対する治療方法の確立と今後の死亡者数減少に寄与することが期待される。特に、ステロイドの医療費は他の重篤化コロナウイルス治療と比較しても比較的安価で、治療に際し最新の医療機器のような特筆すべき高度な技術も不要だ。「日本国内のみならず発展途上国などさまざまな諸外国においても、研究成果を生かした治療法がCOVID-19重症化患者に対して臨床適用されることが期待される」と、研究グループは述べている。

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