2022年6月に閣議決定された規制改革実施計画では、デジタル技術の利用によって販売店舗と薬剤師・登録販売者の有資格者がそれぞれ異なる場所に所在することを可能とする制度設計の是非について検討することとされた。
益山氏は、2021年度の厚生労働科学特別研究事業で、専門家が医薬品の管理、医薬品販売にかかる従業員の監督、対人業務などをデジタル技術を活用し、遠隔で行うことを検証した調査結果を報告した。
医薬品の管理については、情報通信技術の活用により、「購入者の本人確認が取れる」「購入者のお薬手帳の情報や購入時点での体調の状態が正確に把握できる」などの条件がクリアできれば、「薬剤師や登録販売者が常駐しなくても、遠隔による対応が可能となり得る」とした。
一方、濫用の恐れのあるOTC医薬品による過量投与の問題が深刻化する中、「大事な点は遠隔技術を用いた場合に販売しないという判断を行うトリアージができるか」との問題点を指摘した。
今後、制度を検討していく上で、「専門家の不在時間でデジタルを活用した販売をする際には、不適切な使用が疑われる場合などに販売しない、OTC薬での対応よりも受診勧奨の指示をするなどの対応がしっかりできることや、コロナ禍で課題となった若者の濫用を防ぎ必要な救済ができる制度変更をお願いしたい」と要望。一般薬のリスクに応じて検討すべき課題との認識を示した。
落合孝文構成員(渥美坂井法律事務所)は、「濫用の恐れのある医薬品で致死量となるようなものがOTC薬として販売されていることがおかしい。オンライン規制というよりは、OTC薬として販売できるものをどうしていくかという観点で検討していくことが必要」と語った。
一方、森昌平構成員(日本薬剤師会副会長)は、「実地での管理が必要とされている店舗管理について、デジタル技術を活用して遠隔での業務の可否を検討していくことは、現在の技術の進歩を考えると必要」との考えを示しつつ、従業員の管理や店舗利用者への対応、予期されなかったことへの対応などの業務のうち、「業務の種類によってはデジタルではなく、実地でなければ管理できないものもある」と主張した。
コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどに医薬品販売店舗を拡大することについては、「無許可店舗はまず考えられない。何のための許可業者なのか。根本的な問題で許可業者で行うことは、国民に必要な医薬品のアクセスを考える上で安心・安全を確保することで前提となり、欠かせない」とした。