大学生426人対象アンケート、頭痛の程度や片頭痛の有無を調査
広島大学は4月5日、ネガティブな反復思考と頭痛の関連を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院人間社会科学研究科の杉浦義典准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Cognitive Therapy」にオンライン掲載されている。
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片頭痛や緊張性頭痛といった一次性頭痛は、多くの人が経験する。不安や抑うつなどの心理的な問題が一次性頭痛と関連することを示す研究はあるが、ネガティブな反復思考(心配のようなネガティブな考えが長く続く傾向)が、非臨床群において頭痛の度合いを強めるのかは明らかではなかった。ネガティブな反復思考は、不安や抑うつなどの多くの心理的な問題に共通の要因として近年注目されている。ネガティブな反復思考の頭痛への影響が明らかになれば、頭痛に対する心理療法にもつながると期待される。
今回の研究では、まず、大学生426人(女性220人、男性204人、無回答2人)を対象に、アンケート調査を実施。頭痛の程度について、頻度、重症度、頭痛による生活への支障など多面的に測定した。同時に、その人が片頭痛を患っているかどうかのスクリーニングの質問も含めた。アンケート調査は約1か月をあけて2回実施した。
反復思考傾向「高」で、1か月後の片頭痛リスク2.48倍高い
調査の結果、1回目の測定で反復思考の傾向の高い人は、1回目には片頭痛ではなくても、1か月後に片頭痛と判定されるリスクが2.48倍高いことがわかった。片頭痛の場合、本人の自己申告と医師の診断とが一致する傾向が知られている。つまり、反復思考の傾向の高い人は、その後片頭痛を「発症」するリスクが高いことがわかった。
反復思考、頭痛を短期的には和らげて長期的には悪化させる可能性
先行研究により、反復思考がどのようなプロセスで重症になるかが明らかになっている。日常生活では、困った問題が生じた時、放っておくことができずに「考え続けなくてはいけない」と思うことで反復思考が始まる。このように粘り強い人は柔軟に考えることが苦手な傾向があり、行き詰まり、解決策を見出せない状態(問題が解決できないという不全感)に陥ることが多い。そして、「解決できないなら、もっと考えなければいけない」と思うことで反復思考がさらに悪化する。
そこで今回の研究では、「考え続ける義務感→問題が解決できないという不全感→ネガティブな反復思考」の3つのプロセスそれぞれを測定した。その結果、反復思考の3つのプロセスは、1か月後の頭痛の程度と異なった関係を示した。また、片頭痛の人とそうでない人とでパターンは異なっていた。
まず、片頭痛でない人の場合、頭痛の程度に個人差があることがわかった。このグループの人が経験する頭痛は、主に緊張性頭痛と考えられる。このグループでは、「考え続ける義務感」が高いと、1か月後の頭痛の重症度が低く、「問題が解決できないという不全感」が高い場合には、1か月後の頭痛の重症度が高いことが判明。「考え続ける義務感」は、反復思考のはじまりの段階と言える。まだこじれていないため、頭痛から気をそらす働きがあると考えられるという。しかし、問題が解決できないという不全感が出てくると肩に力が入るなどして、頭痛がひどくなると考えられるとしている。
次に、片頭痛の人の場合、やはり頭痛の程度には個人差があった。片頭痛の人の中では、「問題が解決できないという不全感」が高い人ほど、1か月後の頭痛による日常生活への支障が低いことが判明。一方、ネガティブな反復思考の程度が強いと、1か月後に頭痛が日常生活に支障をきたすほどになることがわかった。片頭痛の人の場合、反復思考が頭痛の緩和から増強に転じるポイントが、片頭痛でない人と比べると反復思考のプロセスのより重度な側にある。ネガティブな反復思考として手に負えなくなると、頭痛による支障の程度を高めると考えられるとしている。
さらに今回の研究では、新たに92人(女性69人、男性22人、無回答1人)を対象に、1週間の間隔で同じ内容の調査を実施。その結果、片頭痛の人の中では、ネガティブな反復思考の傾向の高い人ほど1週間後の頭痛の程度が弱まっていた。反復思考は、短期的には頭痛を緩和するようだが、同データは参加者数が少ないため、解釈には慎重になる必要があるとしている。
反復思考を低減させる心理療法、頭痛緩和に有効な可能性
今回の研究から、ネガティブな思考が持続する人ほど、片頭痛を患う人が多いことがわかった。また、ネガティブな反復思考は、初期の段階では頭痛の程度を緩和することもわかった。短期的に頭痛を緩和する効果があるために、ネガティブな反復思考はさらに持続するようになり、長期的にはより頭痛の程度を悪化させるというメカニズムが考えられる。
ネガティブな反復思考は、頭痛を悪化させるため、反復思考を低減させる心理療法は、頭痛の緩和にも有効な可能性が考えられる。繰り返し鎮痛薬を用いることで頭痛が慢性化することが知られているため、薬物を用いない治療は有望である。「反復思考が少なくとも短期的には頭痛を緩和することが見出されたことから、考え事をうまく用いることで頭痛に対処するという可能性も考えられる」と、研究グループは述べている。
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・広島大学 プレスリリース