喘息やアトピー性皮膚炎の患者は変形性関節症のリスクが高い可能性
喘息やアトピー性皮膚炎(AD)の患者は、変形性関節症(OA)のリスクが高い可能性を示すデータが報告された。米スタンフォード大学のMatthew Baker氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of the Rheumatic Diseases」に3月27日掲載された。
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Baker氏は、「本研究は因果関係やメカニズムを明らかにする研究デザインで行われていない」と断った上で、「われわれは、マスト細胞(アレルギー発現に関連している細胞)がOA患者の関節で増加して、その活動がOAの発症を促すのではないかと考えている。喘息とADは氷山の一角に過ぎず、ほかにも食物アレルギーや花粉症を含むアレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患も同様の影響をもたらすのではないか」と述べている。なお、米国アレルギー・喘息・免疫学会によると、AD患者の約半数は、花粉症、喘息、食物アレルギーなどのアレルギー性疾患を併発しているという。
Baker氏らの研究は、医療費請求データベースとスタンフォード大学の研究レジストリという2件のデータベースを用いて行われた。
前者の医療費請求データベースを利用した研究では、喘息またはADの既往のある患者11万7,346人(平均年齢52歳、女性60%)と、それらの既往のない患者124万7,196人(同50歳、48%)のデータから、傾向スコアマッチングにより年齢や性別、人種/民族、教育歴、観察期間、チャールソン併存疾患指数、外来診療の頻度の一致する各群10万9,899人のデータセットを作成して比較検討。OA罹患率は、喘息またはADの既往あり群が1,000人年当たり26.9、既往なし群は同19.1であり、調整オッズ比(aOA)は1.58(95%信頼区間1.55~1.62)だった。喘息とAD双方の既往のある患者は、よりOA罹患率が高かった〔aOR2.15(同1.93~2.39)〕。また、喘息患者とCOPD患者との比較では、aOR1.83(1.73~1.95)だった。
後者の研究レジストリを用いた研究では、喘息またはADの既往のある患者4万3,728人と、それらの既往のない患者7万699人を比較。前者の研究で傾向スコアマッチングに用いた因子のほかに、ORの重要なリスク因子の一つであるBMIを調整因子として加えて解析。その結果、喘息またはAD既往者のOA罹患率は42%高いことが分かった〔aOR1.42(1.36~1.48)〕。
これらの研究のみでは、喘息やADに対する治療によってOAリスクを低下させられるか否かは分からない。しかしBaker氏は、「古い研究ではあるが、抗ヒスタミン薬の使用が、OA患者の関節の構造的変化のスピードが遅いことと関連しているとの報告がある。マスト細胞の活性やヒスタミンの作用を抑制する薬剤は豊富にあり、それらによってOAリスクを低下させ得るのではないかと期待している」と話している。
米ニューヨーク市のリウマチ専門医であるTheodore Fields氏は、「アレルギー性疾患とOAの関連の背後にあるメカニズムは、軽度の炎症ではないか」と推測している。そして、ADに対してはさまざまな治療法があり現在も多くの薬剤が開発中であることから、「ADの治療がOAの予防や進行抑制につながるのであれば、利用可能な治療選択肢は少なくない」と述べている。
Fields氏によると、OAの症状を改善するための治療法は複数存在しているが、OAという疾患そのものを治癒に導く治療法はまだ確立されていないという。今回報告された結果に対しては、「喘息やAD患者はOAリスクが高い可能性を示すものと言える。同時に、アレルギー性疾患に対する治療が、そのリスクを抑制するのではないかとの希望を抱かせるものでもある」と評している。
▼外部リンク
・Increased risk of osteoarthritis in patients with atopic disease
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