医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 日本の市販ベビーフード、栄養学的な実態調査で価格帯別の特徴を明らかに-東大ほか

日本の市販ベビーフード、栄養学的な実態調査で価格帯別の特徴を明らかに-東大ほか

読了時間:約 3分33秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年04月05日 AM10:37

ベビーフードの情報を網羅的に収集、栄養学的特徴を低/高価格帯間で比較調査

東京大学は4月3日、日本で初めて日本の市販の離乳補助食品の栄養学的な特徴を明らかにし、世界で初めて食品選択の重要な要素である価格と栄養学的な特徴との関連を明らかにしたと発表した。この研究は、同大未来ビジョン研究センターの杉本南特任助教、同大大学院医学系研究科の佐々木敏教授、東邦大学健康科学部看護学科の上地賢講師、国立健康・栄養研究所の苑暁藝特任研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「British Journal of Nutrition」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本では、少子化にも関わらず、(以下、)の生産量が年々増加傾向にある。つまり、乳幼児の食生活で、ベビーフードの果たす役割が大きくなっていると言える。欧米や東南アジア諸国での研究では、ベビーフードの食塩や砂糖の含有量に関する懸念が指摘されている。一方で、日本のベビーフードを網羅的に収集して、その栄養学的な特徴を調べた研究はこれまでなかった。日本では、離乳期にある乳幼児の半数が自宅で保育されており、子どもの食事は家庭とその経済状況に大きく依存する。食品の価格は、保護者が子どもの食事を選ぶ上での重要な要素だが、ベビーフードの栄養学的特徴と価格との関連は諸外国の研究でも明らかにされていない。

そこで研究グループは、日本ベビーフード協議会に参加する5企業の製品に加え、食料品店、ドラッグストア、ベビー用品店のオンラインストア、および東京に位置する一部の実店舗で販売されている製品の情報を収集。内容量、栄養素の含有量、原材料の情報は、メーカーのウェブサイトから抽出した。また、店舗のウェブサイトから、製品の販売価格を抽出した。製品の種類(ドライタイプの食品、ウェットタイプの食品、菓子類、飲料類)のサブタイプ(ドライタイプであれば穀類とそれ以外、飲料類であれば果物ジュース、茶類、清涼飲料水、など)ごとに、100gあたりの販売価格(円/100g)の中央値で低価格帯/高価格帯に分けたうえで、製品の種類ごとにまとめ、栄養学的な特徴を比較した。

高価格帯でタンパク質「多」食塩「少」、低価格帯で原材料種類が多様

栄養素の含有量を比較したところ、ドライタイプの製品では、有意な差は見られなかった。ウェットタイプでは、高価格帯の方が、低価格帯と比べて、タンパク質が多く、食塩が少なく、1種類以上の添加糖が使用されている製品が少なかった。一方で、使用されている原材料の種類は低価格帯の方が多様だった。ウェットタイプで、よく使われている原材料を詳しく調べたところ、いずれの価格帯の製品でも、野菜類では、にんじん、たまねぎ、だいこん、スイートコーンを使っている製品が多く見られた。

菓子類と飲料類、高価格帯でタンパク質含有量が多い傾向

菓子類と飲料類では、高価格帯の方が、タンパク質の含有量が多い傾向があった。また、菓子類では、高価格帯の方が、1種類以上の添加糖が使用されている製品は少ないものの、どちらの価格帯でもおよそ8割以上で何らかの添加糖が使用されていた。

食物繊維・微量栄養素・添加糖などの情報提供も望まれる

また、表示義務のない栄養素の含有量が表示されている製品の割合を比較。全体として、ドライタイプ、ウェットタイプ、菓子類のいずれの価格帯でも、カルシウムと鉄以外の栄養素の含有量が表示されている割合は非常に低いものだった。ウェットタイプでは、高価格帯の製品の方が、ビタミンAとD、、鉄の含有量を表記している製品の割合が多い結果だった。

ウェットタイプでは、使用されている食材の種類は低価格帯の方が豊富であることから、価格の差は、使われている食材の数や量ではなく、食材そのものの価格や、製造過程(栄養素の強化など)を反映したものである可能性がある。表示義務のない栄養素の含有量が表記されている製品は非常に少なかったことから、保護者における商品選択の助けとなるよう、食物繊維や微量栄養素、添加糖などの含有量に関する情報の提供が望まれる。

今回の研究では、添加糖の含有量については情報が乏しく、記述することができなかったという。含有量の言及ができないため、添加糖の使用の有無だけで、それが栄養学的な懸念点であるとは判断できない、としている。

無理をして高い製品を使う必要はないが「一部の製品に偏らない」など工夫を

今回の研究結果は、乳幼児の健康に資するベビーフードの開発や適切な利用の促進への貢献が期待される。一方で、日本の子どもたちが、実際にどのくらいベビーフードを食べているのか明らかではない。このため、今回の調査の結果だけから、製品中のある栄養素の含有量を減らすべき/増やすべきか、利用を控えるべきかを結論することはできないとしている。また、この研究の結果は、高価格帯の製品の方の購入を積極的に勧めるものではない。その理由として、諸外国の製品に比べると、日本の製品は全体として、タンパク質が少なく、食塩が多い傾向であったことと、多くの微量栄養素の含有量が不明だったことがあげられる。従って、家庭で乳幼児の食事にベビーフードを用いる際には、無理をして高い製品を使う必要はなさそうだが、一部の製品に偏らない、食塩の量に気をつけつつ他の食品・食材と組わせて与える、などの工夫をするとよい可能性が示唆された。

今後の研究として、1日の食事のエネルギーや各種栄養素、食品群の摂取において、ベビーフードからの摂取量がどのくらいの割合を占めているのか、調べていく必要がある。また、ベビーフードの利用が多い子どもとそうでない子どもの栄養素や食品群の摂取量、食習慣の違いなども調べる研究も行い、適切なベビーフードの使い方の根拠を示していくことも望まれる、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • トイレは「ふた閉め洗浄」でもエアロゾルは漏れる、その飛距離が判明-産総研ほか
  • AYA世代の乳がん特異的な生物学的特徴を明らかに-横浜市大ほか
  • 小児白血病、NPM1融合遺伝子による誘導機序と有効な阻害剤が判明-東大
  • 抗血栓薬内服患者の脳出血重症化リスク、3種の薬剤別に解明-国循
  • 膠原病に伴う間質性肺疾患の免疫異常を解明、BALF解析で-京都府医大ほか