厚生労働省は、来年度から2025年度までの3年間、抗微生物薬を開発して上市後、販売量を適正水準に保つ試みを実施した企業を対象に、収入額が一定額に満たない場合の差額を「抗微生物薬適正使用協力金」として支援するモデル事業を実施する。まずはカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)を候補に試行的に実施し、抗菌薬の適正使用や新規抗菌薬の研究開発に効果があるかを検証した上で、26年度以降には本格的な抗微生物薬の市場インセンティブの導入につなげる。今夏頃までに企業の公募を開始し、9月から事業を開始する計画だ。
29日に開かれた抗微生物薬の市場インセンティブに関する検討会で公表した。抗菌薬の承認数は減少傾向にあり、事業予見性を高める市場インセンティブ導入で市場からの撤退を防ぎ、新規抗菌薬開発につなげる。厚労省は来年度予算で「抗菌薬確保支援事業」として11億円を計上した。
年間収入保証型の市場インセンティブはスウェーデンが採用しており、国が補填するのは売上保証額と実際の売上額の差額であるため、診療報酬制度に影響を与える懸念が少ない点から国内でも導入した。
今後、対象となる薬剤耐性微生物を決定後、その治療で用いられる抗微生物薬の費用として日本全体で推計した年間市場規模を試算。そこから「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」に基づく抗微生物薬適正使用の政策効果などで2割減を見込み、予測市場規模を設定する。
指定された菌種の予測市場規模から、各抗微生物薬の使用実績を勘案し、基準売上高を設定する。企業には適正使用を遵守してもらい、基準売上高と実際の売上額の差額を協力金で支援し、年度末に企業に支払う。
基準売上高を超える売上高については、企業が新規抗微生物薬の研究開発費用等に用いるよう契約要件に定めることを想定している。インセンティブの対象となり得る新規抗微生物薬が新たに上市された際には、再度配分を見直す。
初会合では厚労省案を大筋で了承した。指定対象となる菌種に関しては、委員から「カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)が最も優先度が高いのではないか」との意見が相次いだ。次回検討会で公募要領案を示す。