脊髄の運動神経細胞の変性により筋萎縮や筋力低下を示すSMA
中外製薬株式会社は3月24日、同社と戦略的アライアンスを締結しているエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社が3月20日、2~25歳の広範囲の脊髄性筋萎縮症(SMA)に対するエブリスディ(R)(一般名:リスジプラム)のピボタル試験であるSUNFISH試験の新たな長期データを発表したと公表した。今回のデータはMuscular Dystrophy Association (MDA) Clinical and Scientific Conference(3月19日〜22日開催)で発表された。
SMAは、遺伝性の神経筋疾患であり、脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を示す。乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患である。SMAの有病率は10万人あたり1〜2人である。SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパク質が産生されないため発症する疾患である。
SMNタンパク質レベルを増加させ、維持することでSMAを治療する「エブリスディ」
エブリスディは、SMN(survival motor neuron)タンパク質の欠損につながる5番染色体の変異によって引き起こされる、SMAを治療するためにデザインされたSMN2スプライシング修飾剤である。SMNタンパク質レベルを増加させ、維持することでSMAを治療するよう設計されている。SMNタンパク質は全身に見られ、運動神経と運動機能の維持に重要である。2020年8月に米国、2021年3月に欧州で、同年6月に日本で承認を取得している。
SUNFISH試験は、II型およびIII型SMAの小児および若年成人患者(2〜25歳)を対象としたプラセボ対照二重盲検第2/3相国際共同治験である。第2相パート(51名)では、第3相パートにおける至適用量の検討を行った。第3相パート(180名)では、投与開始12か月時点のMFM-32(SMAを含む神経筋疾患患者の運動機能の一部分および全般を評価するために確立された評価尺度)の合計スコアによる運動機能評価を行った。
1年目に認められた運動機能のベースラインからの改善、投与4年目まで維持
今回の試験の1年目に認められた、MFM-32およびRULM(SMA患者の上肢の運動を評価するために考案された評価尺度)で評価した運動機能のベースラインからの改善は、エブリスディ投与4年目まで維持された。未治療の場合、II型またはIII型SMA患者においては一般的に経時的に運動機能の低下を示すことが自然歴のデータにより示されている。エブリスディの4年間に渡る忍容性は良好だった。有害事象および重篤な有害事象は基礎疾患を反映したものだった。高頻度に報告された有害事象は、頭痛、発熱および上気道感染であり、治験中止に至った治験薬と関連のある有害事象は認められなかった。
「本データにより、運動機能の改善が4年目まで維持され、有害事象の発現は48か月を通じ経時的に減少し、エブリスディの長期的な有効性および安全性が示された。また、治験参加者より、食事や物を持ち上げる、動かすなどの自立した日常生活動作の継続的な改善または維持が報告された」と同社は伝えている。
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・中外製薬株式会社 ニュースリリース