厚生労働省は23日の医薬品等行政評価・監視委員会で、新型コロナウイルス感染症が5類に移行するタイミングで、医薬品等に対する緊急承認制度の扱いを見直す考えを示した。具体的な内容は4月中に通知等で示し、5類移行後に新たに同制度を適用しない考えも明らかにした。
医薬品医療機器等法に基づく緊急承認制度では、感染症のアウトブレイク時等において、後期第II相試験程度の臨床試験で有効性が「推定」された医薬品等を対象に、最大2年を期限に承認している。正式な薬事承認を得る場合、製造販売業者は有効性を確認する臨床試験を行い、改めて承認申請する必要がある。
この日の委員会で厚労省は、2022年11月に同制度が初めて適用された塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ錠」について、審査報告書の内容、投与後に妊娠が判明した事例が確認されたこと、事例確認後の安全対策などを報告した。
花井十伍委員(全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人)は、同制度について「平常時となった際の着地点が分かりづらい」と指摘。同剤に関しては、緊急承認から1年以内に薬事承認申請を行うことが求められていることを踏まえ、「いったん緊急承認を取り下げ、きちんと非劣性の第III相試験を行った上で堂々と再申請してもらう形にしなければなし崩しの制度となる」と懸念を示した。
泉祐子委員(全国薬害被害者団体連絡協議会世話人)も、同剤を「結論ありきで審議したゴリ押しのような薬」と位置づけ、国内で複数の代替薬があると主張した上で、「第III相試験まで必ず実施することと、なし崩しで承認したまま置いてはいけない」と訴えた。
これに対して、厚労省は「制度の存続に関していつ終えるかはまだ決まっていない」としつつ、5月8日に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行することを踏まえ、「移行後は新たに緊急承認を適用することは基本的にはない。感染拡大の波が比較的小さい現在の状況が続くのであれば、5類移行のタイミングで何らかの新たな見直しが必要」との考えを示した。