一般的に外科医3~5人で行う腹腔鏡手術、長時間拘束・手術提供機会の制限など課題
国立がん研究センターは3月23日、腹腔鏡手術支援ロボット「ANSURサージカルユニット」が2023年2月1日に日本で医療機器として承認されたことを発表した。この研究は、同研究センター東病院と朝日サージカルロボティクス株式会社の共同研究グループによるもの。
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国立がん研究センター東病院は、日本初の革新的な医療機器創出を目指し、2015年5月にNEXT医療機器開発センター(現:医療機器開発センター運営部、医療機器開発推進部門)を設置。NEXT医療機器開発センターを中心に、医療現場で未だ解決されないニーズを解決するため、真に医療現場に必要な医療機器開発を推進してきた。
国立がん研究センター東病院では、大腸がんに対する手術の80%以上を腹腔鏡手術で行っている。腹腔鏡手術は一般的には外科医3人、多い時には5人(下部直腸がんの場合)で行い、長時間外科医を拘束する必要があり、患者への手術提供機会の制限や労働時間の超過などの課題が指摘されている。
こうした課題を解決すべく、国立がん研究センター東病院の伊藤雅昭大腸外科長・医療機器開発推進部門長は新しいコンセプトの手術支援ロボットの創出を目指し、当時、東京大学の助教であったエンジニアの安藤岳洋氏(現:朝日サージカルロボティクス最高開発責任者)と同じくエンジニアの宮本寛之氏と共に、2015年8月7日に国立がん研究センター発ベンチャーとして株式会社A-Tractionを創業。その後株式会社A-Tractionは2021年7月7日に朝日インテック株式会社によって完全子会社化され、朝日サージカルロボティクス株式会社に社名が変更された。
執刀医が1人で鉗子・内視鏡カメラの両方を直感的に操作、新しいコンセプトの支援ロボット
ANSURサージカルユニットは、現在世界的に市場を独占している手術支援ロボットとは異なる新しいコンセプトの手術支援ロボットだ。腹腔鏡手術において、従来、執刀医の指示で鉗子を操作していた助手や内視鏡カメラを操作するスコピストに代わり、執刀医は自身の鉗子を持ちながら、ロボットが保持する鉗子・内視鏡カメラを操作することができる。通常2人の外科医が担う助手とスコピストの作業を1台のロボットが担うことで合理的な手術環境が整備され、外科医のワークライフバランスの改善・向上が期待される。
手術時間短縮で、患者の体への負担少なく医療提供が可能
また、執刀医は一人で鉗子・内視鏡カメラの両方を直感的に操作できるようになるため、自身が望む視野が得られ、適切な強度で臓器を引っ張ったり患部を切除したりできる。より効率的に手術を進めることで手術時間が短縮され、より患者の体への負担が少ない医療の提供が可能となる。
医師の働き方改革推進にも貢献、今後普及に向けエビデンス構築
同ロボットは、今後も増え続けることが想定される腹腔鏡手術に対して外科医の数が充足しないという重大な問題を解決し、医師の働き方改革の推進に貢献していくとしている。さらに今後、国立がん研究センター東病院では「ANSURサージカルユニット」を用いた手術に関するエビデンスを構築し、ロボットの普及とより良い医療の提供を目指す、と述べている。
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・国立がん研究センター プレスリリース