岡山市救急搬送データ+気象庁データから、気温上昇と心血管救急搬送との関連を解析
岡山大学は3月17日、岡山市の救急搬送データと気象庁のデータを用いて、気温上昇と心血管救急搬送との関連を調べた結果を発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科(医)の藤本竜平院生(津山中央病院循環器内科医長)、鈴木越治研究准教授、中村一文准教授、内藤宏道准教授、中尾篤典教授、伊藤浩教授、頼藤貴志教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Heart Association」に掲載されている。
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近年、国際的に問題視されている気候変動と地球温暖化により世界中で異常気象が発生し、各国が健康を守るための気候変動対策を策定している。東アジアは梅雨明け後に張り出してくる太平洋高気圧の影響により、連日の猛暑日が記録され、高齢者の健康への影響が懸念される。日本において心血管疾患は死因の第2位を占めるが、東アジア特有の梅雨明け後の異常な暑さが高齢者の心血管救急搬送に与える影響については、十分に知られていない。
研究グループは、岡山市救急課から2012~2019年までの梅雨入りから梅雨明け3か月までの間に心血管疾患で救急搬送された65歳以上の高齢者6,527人の救急搬送データを取得。また、気象庁岡山市気象台から、外気温、相対湿度、気圧を、岡山市環境保全課が管理する岡山市内観測所から、PM2.5の平均大気中濃度のデータを1時間ごとに取得した。これらのデータをもとに、梅雨明け1か月後、2か月後、3か月後でそれぞれ評価した。
梅雨明けの1か月後、心血管救急搬送リスク34%上昇
研究の結果、気温と心血管疾患の関連は梅雨明け1か月後に最も高くなることが新たにわかった。時間ごとの相対湿度、気圧、PM2.5濃度を調整したところ全体の心血管救急搬送リスクは34%高くなった(調整オッズ比1.34,95%信頼区間1.29,1.39)。疾患別では、心不全が37%、虚血性心疾患が37%、不整脈が44%上昇することが示された。
また、暑い気温に晒されることと心血管疾患との関連が、梅雨時および梅雨明けによって異なる可能性を評価するために、梅雨以外の期間と比較。その結果、梅雨明け1か月後の心血管救急搬送リスクが34%上昇した。
気温が高いほど心血管搬送リスク上昇
さらに、その期間内で発症前の時間ごとの影響の評価では、発症1時間前が33%、より長い期間では1日前が40%とリスク上昇していた。気温と心血管搬送リスクとの非線形の関係を評価したところ、気温が高いほど、リスクが上昇することが明らかになった。
梅雨明け後の暑い日、水分補給・外出を控えるなど予防措置の検討を
高齢者が梅雨明け1か月後の暑い気候に晒されると、気温が高ければ高いほど心血管疾患にかかりやすく、特に、短時間や1日前に暑さに晒された場合にリスクが上昇することが初めてわかった。梅雨明け後の暑い日には、水分補給を行い、外出を控えることや、断熱住宅やエアコンなどの予防措置を検討することが望ましく、周囲の人々のサポートが必要だ。
これまで気温上昇が心血管疾患リスクを上昇させる報告はあったが、東アジア特有の梅雨明け後の猛暑が高齢者心血管疾患救急搬送リスクに関連していることが新たにわかった。気候変動対策と循環器病予防の双方の観点からも極めて有用な情報を提供するものと考えられる。また、高齢者の健康維持に関する重要な知見となる、と研究グループは述べている。
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