2021年9月に実施した薬価調査では、改定前薬価に最低薬価制度が適用されていた品目の平均乖離率は9.3%となり、全品目を対象とした平均乖離率7.6%よりも高かった。最低薬価が適用された品目は、安定確保医薬品であってもカテゴリーAで平均乖離率8.3%、カテゴリーBで3.0%、カテゴリーCで10.0%と高い。
成川衛構成員(北里大学薬学部教授)は、「いくら安売りされても薬価が元に戻るルールで、最低薬価の医薬品が総価取引の値引きの調整弁になっている。流通の場で医薬品の価値が考慮されていないのが非常に残念で、対策を考えないといけない」と強い懸念を示した。
その上で「市場での競争がきちんとなされるかで重要なのは単品単価取引であり、関係者が努力することで単品単価取引ができるのであれば、それを促していくインセンティブと総価取引に対するディスインセンティブを考える術はある。かつての未妥結減算方式のように政策誘導を考えてもいいのではないか」と提案した。
三村優美子構成員(青山学院大学名誉教授)は、「ここまで重要な医薬品を通常の価格交渉に入れてはいけない。それをきちんとアナウンスし、ルール化されていれば、医薬品卸と医療機関、薬局との間でこのような価格交渉は行われないだろう」と是正が必要との考えを示した。
最低薬価や安定確保医薬品の償還のあり方については「購入価償還もあれば実費償還、実物流コストの考え方を入れていく。制度設計した上で、どれが一番適切かが見えていくのではないか」と述べた。
一方、薬価差額全体のうち薬局の割合が6割を占める現状に対して、坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大学大学院教授)は、「薬局は調剤における裁量権があり、特許切れ薬については、どの後発品を採用するか決めることができる。最も薬価差益の大きい後発品を採用して薬価差益で稼ぎ、薬局の経営原資になっている」と述べ、薬局における特許切れ医薬品の償還方式について見直しが必要との考えを示した。