CGRP関連抗体薬のレスポンダー、欧米の論文報告はあったが日本はなかった
慶應義塾大学は3月14日、片頭痛の新規治療薬CGRP関連抗体薬がどのような患者に効果があるのか検討した結果、年齢が高く、予防薬失敗数が少なく、免疫系疾患の既往がない患者に効きやすいことが明らかとなったと発表した。この研究は、同大医学部内科学教室(神経)の滝沢翼専任講師、中原仁教授、同医学部6年生の井原慶子氏の研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Headache and Pain」オンライン版に掲載されている。
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片頭痛は有病率が8.4%と頻度の高い疾患だ。片頭痛の薬物治療は、頭痛が生じた際に対処する急性期治療、頭痛の有無に関わらず予防的に使用する予防療法の2つに大きく分けられる。予防療法として、従来は抗てんかん薬、降圧薬、抗うつ薬などが用いられていた。いずれも他の疾患のために開発され、後に片頭痛にも有用であることが経験的に明らかになった薬剤だが、効果が不十分な患者や、めまい、眠気などの副作用によって継続が困難な事例もある。近年、片頭痛の病態に則した予防療法としてカルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin gene-related peptide:CGRP)関連抗体薬が開発され、欧米では2018年、日本では2021年より使用可能となった。
CGRP関連抗体薬は、従来の薬剤よりも効果を示し、多くの患者に恩恵をもたらしている。一方で、比較的高額(3割負担で月々約1万3,000円)であり、注射部位反応や便秘などの副作用も生じうることから、処方を最適化することが望ましいと考えられている。どのような患者にCGRP関連抗体薬が効果を示すか(レスポンダー)について、これまでに欧米からの論文報告はあったが、日本からの論文報告はなかった。
慶應義塾大学病院に通院中の片頭痛患者データを調査
そこで今回、どのような臨床的特徴がCGRP関連抗体薬の効果と関連しているのか明らかにするため、同大病院の外来に通院中の片頭痛を有する患者のデータを調査した。片頭痛で当院外来に通院中の患者のうち、CGRP関連抗体薬を開始して3か月以上治療を継続した101人(ガルカネズマブ57人、フレマネズマブ31人、エレヌマブ13人)について解析。治療開始3か月後に、治療開始前と比較して片頭痛の日数が半分以下に減少した患者をレスポンダー、それ以外をノンレスポンダーと定義した。
レスポンダーになりやすい特徴は、高年齢・予防薬失敗数が少ない・免疫系疾患の既往なし
CGRP関連抗体薬が投与された半数以上にあたる55人(54%)において片頭痛日数が半減していた(=レスポンダー)。レスポンダー群(55人)とノンレスポンダー群(46人)における、年齢や体重、既往歴、ひと月あたりの片頭痛日数、痛みの程度・性質、急性期治療薬の反応、予防薬失敗数(今までに試したが効果が得られなかった、あるいは、副作用のために継続できなかった予防薬の数)などのデータを基に、どのような患者にCGRP関連抗体薬が奏功するのか、解析した。その結果、年齢が高く、予防薬失敗数が少なく、免疫系疾患の既往がない患者ほどCGRP関連抗体薬のレスポンダーになりやすいことが明らかとなった。
今後、さらなる検討が必要
今回得られた結果のうち、「予防薬失敗数」については欧米からも既に複数の類似した研究報告がある。「年齢」についてはこれまでの報告と異なる面もあり、また既往歴に関して、過去の報告は少ないため、今後もさらなる検討が必要と考えられる、と研究グループは述べている。
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・慶應義塾大学 プレスリリース