ソーセージや菓子パンなどの超加工食品、摂取量と個人的特性を調べた日本初の研究
東京大学は3月10日、日本人成人2,742人から得られた8日間にわたる詳細な食事記録データをもとに、超加工食品の摂取量を調査し、年齢、体格、喫煙状況などの個人的特性との関連を調べた結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科社会予防疫学分野の篠崎奈々客員研究員、村上健太郎助教、佐々木敏教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。
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超加工食品とは、複数の食材を工業的に配合して製造された、加工の程度が非常に高い食品であり、ソーセージや菓子パン、清涼飲料などが代表的なものだ。超加工食品は脂質やナトリウムを多く含む一方で、タンパク質や食物繊維、ビタミン・ミネラル類の含有量が少ないため、多く食べることで食事全体の質が低下する可能性がある。また、超加工食品の摂取と肥満や心血管疾患などとの関連が報告されている。さらに、超加工食品の摂取量は、BMIが大きいほど多く、年齢が高いほど少ないなど、個人的特性と関連があることが示されている。超加工食品の摂取量に関わる個人的特性を解明することは、効果的な栄養政策の方針を定めるために重要だ。しかし、日本では超加工食品の摂取状況に関する栄養学研究はほとんどなく、日本人の超加工食品の摂取量と個人的特性との関連は十分に明らかになっていない。
日本人成人2,742人の食事記録データを用い、年齢・体格・喫煙状況などとの関連を調査
そこで今回の研究では、日本人成人を対象とした全国規模の食事調査のデータを用いて、超加工食品の摂取量を調べ、食事の質との関連性を評価。さらに、食品を加工レベルに応じて分類する際に、惣菜や外食の分類方法の違いによって結果が異なるかを検討した。
具体的には、2016~2018年に日本の32都道府県に住む18~79歳の日本人成人2,742人から得られた食事記録のデータを使用。参加者には、8日間にわたって食べたり飲んだりしたものを全て計量して記録してもらった。そして、記録されたすべての食品を研究者が加工レベル別に分類。分類には、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者らが開発した食品分類の枠組みを用いた。これは、加工レベルが低い順に「未加工/最小限の加工」「基本的な加工」「中程度の加工」「高度な加工(超加工食品)」の4段階に分類するものだ。また、外食や惣菜などの家庭外で調理された料理を、「料理に含まれる個々の食材をそれぞれ加工レベル別に分類する場合(超加工食品をより少なく見積もるシナリオ)」と、「すべて超加工食品に分類する場合(超加工食品をより多く見積もるシナリオ)」の2通りで食品分類を行なった。そして、各推定シナリオにおいて超加工食品の摂取量を推定し、個人的特性(年齢、性別、BMI、世帯収入、教育歴、雇用形態、喫煙状況、身体活動量)との間に関連があるかどうかを調べた。
超加工食品、1日の総エネルギー摂取量の3~4割を占める
研究の結果、1日の総エネルギー摂取量に対して超加工食品が占める割合の平均値は、超加工食品をより多く見積もるシナリオでは42.4%、超加工食品をより少なく見積もるシナリオでは27.9%だった。また、シナリオにかかわらず、超加工食品からの総エネルギー摂取量に占める割合が最も大きい食品群は、穀類およびでんぷん質の食品(パンや麺など)だった。
「18~39歳」「喫煙者」で、超加工食品からのエネルギー摂取量割合大
超加工食品の摂取量と個人特性との関連に関しては、各シナリオで共通する結果が見出された。すなわち、総エネルギー摂取量のうち超加工食品が占める割合は、60~79歳の群に比べて18~39歳の群で統計的に有意に高く、過去に喫煙していた群および一度も喫煙したことのない群と比べて喫煙者群で統計的に有意に高いことがわかった。
日本で超加工食品摂取に関する公衆栄養政策を決定する上で重要な資料に
今回の研究は、日本における全国規模の食事調査のデータを用いて、超加工食品の摂取量と個人的特性との関連性を評価した初めての研究だ。日本では近年、アルコール飲料や惣菜の摂取量の増加を伴う食生活の欧米化が進んでいる。同研究の成果は、日本において超加工食品の摂取に関する公衆栄養政策を決定する上での重要な資料になると考えられる、と研究グループは述べている。
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