新型コロナワクチン接種後のアレルギー反応は本物?
ファイザー社製またはモデルナ社製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種後のアナフィラキシーの発生率は、他のワクチンでの発生率に比べると高い。こうした中、この現状に疑問を投げかける小規模臨床試験の結果が報告された。同試験では、予防接種ストレス関連反応(ISRR)の症状の多くがアナフィラキシーの症状と酷似しているため、新型コロナワクチンでは、ワクチン接種後に生じたISRRがアナフィラキシーとして報告されるケースが多い可能性が示唆されたという。米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のMuhammad Khalid氏らが実施したこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI 2023、2月24〜27日、米サンアントニオ)で発表されるとともに、その要旨が「The Journal of Clinical Immunology」2月号(増刊号)に掲載された。
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この研究では、新型コロナワクチンの1回目の接種後に、全身にアレルギー症状が生じたことのある16人(女性15人、平均年齢45歳)を、2回目としてファイザー社製のワクチンを接種する群とプラセボを接種する群にランダムに割り付けた。対象者には、どちらを接種したのかは知らせなかった。さらに、13人には、本物のワクチンであることを伝えた上で、ブースターとしてファイザー社製のワクチンを接種した。
ワクチンまたはプラセボの接種から中央値3分後に、ワクチン接種群で9人、プラセボ接種群で11人に、しびれ、チクチク感、めまい、喉のつかえ、嚥下障害、一過性の血圧上昇などの非アレルギー性の症状が現れた。これらの症状はいずれもISRRの症状と一致し、その45%は、対象者が感じている精神的苦痛のレベルから、中等度から重度の症状とみなされた。ワクチン接種群では3人が接種から中央値4分後にグレード1〜2のアレルギー反応を再発したが、プラセボ接種群でアレルギー反応を再発した人はいなかった。非盲検でのブースター接種後には、13人中10人がISRRの症状を発症し、1人がアレルギー反応を再発した。全対象者のうちの2人はファイザー社製ワクチンの皮内テストで陽性を示したが、添加剤に関する皮膚テストで陽性を示した人はいなかった。
こうした結果を受けて研究グループは、「ISRRの症状はアナフィラキシーの症状に酷似しているが、ISRRに対する認識は高くない。そのことが原因で、新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーの報告率が高くなっているのではないか」との見方を示している。ただし研究グループは、新型コロナワクチンの接種後に症状が現れないと言っているわけではない。ただ、そうした症状が、生まれつき持っているアレルギーが原因で生じているケースは少ない可能性があるということだ。
AAAAI会長を務めるDavid Khan氏は、「ISRRについては、COVID-19のパンデミック以前から知られていたが、パンデミックの発生とそれに伴うワクチン開発により、発症例が増加しているものと思われる」と話す。その一方で同氏は、「本研究において、ワクチン接種によりアレルギー反応が生じたと考えている人の大半が、実際には安全にワクチンを接種できることが示された点は朗報だ。同様のことは、他の数多くの研究でも明らかにされている」と述べている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。
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