これまでに報告された悪性黒色腫の悪性度の指標、効果的な治療につなげるには不十分
大阪公立大学は3月6日、がん関連線維芽細胞(CAF)由来のエクソソームにはCD9およびCD63が発現しており、その中でもCD9陽性のエクソソームは悪性黒色腫細胞の増殖を抑制したと発表した。この研究は、同大 大学院医学研究科形成外科学の藤井奈穂大学院生、元村尚嗣教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Anticancer Research」にオンライン掲載されている。
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悪性黒色腫(MM)は、悪性度の高い皮膚がんのひとつである。悪性黒色腫の悪性度の指標はいくつか報告されているが、まだ十分ではない。小さいものでは手術で根治可能だが、再発や転移をしてしまうことがある。最近では免疫チェックポイント阻害剤などの治療法が適応になるものもあるが、さらなる研究が必要な分野である。
がん細胞とその周囲の間質細胞の間のコミュニケーションは、さまざまなメカニズムを通じてがんの進行を指揮しているといわれている。特に、腫瘍微小環境の主要な細胞であるCAFは、がん細胞の進行に関与していることがわかってきている。また、このCAFが産生するエクソソームという小胞が、がんの進行に重要な役割を果たすことが報告されてきている。そこで、今回の研究では、CAF由来のエクソソームが悪性黒色腫細胞の増殖に及ぼす影響を検討し、その意義を評価することを目的とした。
CD9を発現するCAF由来のエクソソームが悪性黒色腫細胞の増殖を抑制
今回の研究では、まず初めに3名の悪性黒色腫患者から樹立したCAF由来のエクソソームにおけるCD9、CD63、CD81の発現についてウェスタンブロッティング法により検討した。その結果、CAF由来のエクソソームにはCD9およびCD63が発現していること(陽性)が明らかになった。また、CAF由来のエクソソームを悪性黒色腫細胞に添加したところ、CD9陽性のエクソソームが悪性黒色腫細胞の増殖能を抑制していることがわかった。さらに90名の悪性黒色腫患者の組織において、CD9、CD63、CD81を染色して評価したところ、CAF由来のCD9陽性エクソソームが検出された患者の方が、CD9陰性患者に比べて予後が良いことがわかった。
悪性度を評価する新しいマーカーとなる可能性
CD9陽性エクソソームは、悪性黒色腫の悪性度を評価する新しいマーカーになる可能性がある。「今後、CD9陽性エクソソーム中の、悪性黒色腫細胞の増殖を抑制する因子が同定できれば、新しい治療法の開発に結び付く可能性があると考える」と、研究グループは述べている。
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