■厚労省・磯崎氏
厚生労働省医薬・生活衛生局総務課の磯崎正季子国際医薬審査情報分析官は5日、吹田市内で開かれた日本薬剤師レジデントフォーラムで、現在検討中の薬剤師卒後臨床研修ガイドライン案を提示した。研修期間は原則1年間以上とし、調剤、薬物治療、在宅医療などを必須項目として設けた。2021年度から進める厚労省事業での検証をもとにまとめたもの。23年度も引き続き同事業を実施する予定で、同ガイドラインに基づく卒後臨床研修を試行し、運用上の課題を検討する計画だ。
同事業は、全国の医療機関で卒後臨床研修をモデル事業として試験的に実施し、そのあり方を検証するもの。21年度は全国8施設で病院薬剤師25人、薬局薬剤師7人が参加し、22年度は全国25施設に広げ、病院薬剤師42人、薬局薬剤師11人が参加している。
21年度から2年間の事業結果を踏まえ、研修期間は原則として1年間以上とする方針である。例えば、必須項目として4~7月に調剤業務、8~11月に入院・外来患者の薬物治療管理、3月に在宅医療を学ぶ。選択項目として11~2月に無菌調製やTDM、DI、手術室やICU、小児科、産婦人科、精神科の薬剤師業務などを学ぶ。
研修の主な実施施設は病院だが、内服や外用の調剤業務は病院や薬局の区別なく研修できる。一つの病院で研修を完結させるほか、複数病院で協力して研修生を受け入れることも可能。薬局の在宅医療研修を最低でも2週間実施することを必須とした。
ガイドライン案には、研修期間のほか、卒後研修の意義、到達目標、研修項目、指導方法などを盛り込む。指導者が研修生の理解度や実践力を7段階で評価する「評価シート」も設ける予定。卒後臨床研修の実現に向けた課題として、▽受け入れ体制の整備▽制度化の検討▽費用負担のあり方の整理――などが示された。
磯崎氏は「実務実習でも受け入れ施設のキャパシティに限りがある中で、仮に卒後臨床研修を制度化して受け入れる体制を確保できるか」と課題を指摘。要検討事項として、指導者の要件や育成、人数の確保、研修施設の認定や指定の必要性などを示した。
卒後臨床研修に送り出す中小病院や個人薬局の負担にも言及。「やっと人材を確保したのに、また1年間、研修に送り出さなければならなくなる。その余力を生み出せるのかも課題の一つになる」と話した。研修費用や期間中の給与負担のあり方も整理する必要があるとした。
制度化や義務化について「一部には、6年制にした上でさらに研修を義務化する必要があるのか、大学の学びを充実させることで対応できるのではないかという声もある。制度化に当たっては、そういった意見に対する説明も必要になる」との認識を示し、「卒後研修の効果を検証することや、卒業生全員に実施するのかという対象者の範囲の検討も必要」と話した。
23年度事業では、受け入れ施設の要件、卒後研修の評価方法とその中長期的な効果の検証体制を検討事項としている。