薬剤師の専門性を担保する仕組みとして、薬系職能団体や関連学会ごとに領域別認定・専門薬剤師制度が設けられているが、制度設計や認定要件等に整合性がないなどの課題も見られ、第三者機関によって認証される仕組みになっていない現状がある。
そのため、2020~22年度にかけて実施した調査研究では、専門性の質を確保するための具体的な仕組みを提案することを目的に、各団体・学会の認定要件を調査した。
その結果、認定・専門薬剤師の要件にバラツキが見られることが分かった。癌領域の認定・専門薬剤師の要件を比較したところ、例えば学術業績では日本病院薬剤師会の「がん薬物療法専門薬剤師」では2回の学会発表、1編の論文発表が要件となっているが、日本臨床腫瘍薬学会の「外来がん治療専門薬剤師」では、学術業績に関する規程はなかった。
研究班は、資格のある薬剤師の名称と定義が団体・学会ごとに異なるため、薬剤師の経験年数などを踏まえ、「研修認定薬剤師」「領域別認定薬剤師」「専門薬剤師」の順に統一するよう提案した。
研修認定薬剤師は、免許取得後3~5年目の薬剤師全員が目指すべきものと位置づけ、総合的な基礎知識を持つ証とし、生涯研鑽して更新することが重要とした。
領域別認定薬剤師は、特定領域の専門的薬剤業務を提供する能力を備えた証とし、専門研修実績と共に薬学的管理を行った症例を提示できるとした。
専門薬剤師は「領域別認定薬剤師が行う専門的薬剤業務と同等以上の質の高い業務を行い、専門領域に関する研究能力も兼ね備えた薬剤師」と位置づけ、指導的役割を果たすことも求めた。第三者機関による質保証を受け、領域ごとに集約していくことが望ましいことから、質保証に関する具体的な議論を開始すべきとした。
専門薬剤師の新規申請に求める要件として、薬剤師の実務経験5年以上で、研修認定薬剤師であること、専門領域のカリキュラムに沿った研修を受けていることも必須とした。研修は、ジェネラルな領域も含めて5年以上、このうち専門領域については3年以上とした。また、過去5年間で関わった症例あるいは事例の要約が30件以上程度とし、認定試験の合格(面接試験もあることが望ましい)なども求めた。
更新要件として、5年を目安に更新し、関連学会や講習会に参加することで最新の専門領域に関する研修単位を取得し、関わった症例あるいは事例の要約も求めた。
専門薬剤師として5年以上現場で活躍し、領域別認定薬剤師や専門薬剤師を養成する管理的立場として、「指導薬剤師」を必要時に置くことができるとした。
2月23日に都内で開かれた報告会で、代表者の矢野氏は「調査研究を通じて、人工知能(AI)やロボットが出てきている時代に薬剤師でなければできないことをしっかり行い、薬剤師はジェネラリストでなければならないことを再認識した」とした上で、「専門性を考え、その専門性がどれほど貢献しているかエビデンスとして蓄積していくことが今できること」との考えを示した。