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パルボシクリブ+タモキシフェン、HR陽性/HER2陰性進行乳がんに有効-国がんほか

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2023年02月27日 AM10:42

日本、韓国、台湾、シンガポールで実施したP3試験

国立がん研究センターは2月20日、(HR)陽性/HER2陰性の進行・転移性乳がんの女性を対象とした、+タモキシフェン併用療法とプラセボ+タモキシフェン併用療法を比較した第III相試験(略称:PATHWAY試験、NCCH1607)のトップラインデータを開示し、+タモキシフェンの併用投与は、プラセボとタモキシフェンの併用投与と比較し、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある無増悪生存期間(PFS)の延長を示し、主要評価項目を達成したことを発表した。同試験は、国立がん研究センター中央病院主導のもと、アジア地域で実施し、日本12施設、韓国6施設、台湾3施設、シンガポール2施設で実施。今後、国際学会で発表される予定だ。

乳がんは、日本では女性のがんとして最も罹患者数が多いがんである。HR陽性/HER2陰性の進行・転移性乳がんの女性における薬物療法の1つに内分泌療法がある。内分泌療法薬は、ホルモンの分泌や働きを阻害し、ホルモンを利用して増殖するがん細胞の増殖を阻害する薬である。閉経前と閉経後では、体内でホルモンがつくられる経路が異なり、患者の状態にあった薬を使用する。

パルボシクリブ、未承認の「タモキシフェンと併用」を検証

今回の試験で使用した薬剤パルボシクリブは、CDK4/6を阻害する経口分子標的薬である。CDK4/6は、細胞周期の調節に主要な役割を果たしており、細胞増殖を引き起こす。パルボシクリブはCDK4および6を選択的に阻害して、細胞周期の進行を停止させることにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

同製剤は、米国をはじめ世界100か国以上で承認されており、日本ではPALOMA-2試験およびPALOMA-3試験の結果を元に、パルボシクリブ25mgおよび125mgを含有するカプセル剤および錠剤(製品名:イブランスカプセル25mg、同125mg、およびイブランス錠25mg、同125mg)について、「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として2017年9月27日および2020年1月23日にそれぞれ承認されている。ただし、閉経後に使用される内分泌療法薬レトロゾールまたはフルベストラントとの併用投与の成績に基づいて承認されており、タモキシフェンとの併用の有効性や安全性は確立されていない。

患者184人が参加、PFSを延長し、主要評価項目を達成

試験は、HR陽性/HER2陰性の、閉経前・閉経後の進行または転移性乳がん女性患者を対象としたCDK4/6阻害剤であるパルボシクリブの医師主導治験で、184人の患者が参加した。国立がん研究センター中央病院主導のもと、アジア地域で実施し、日本12施設、韓国6施設、台湾3施設、シンガポール2施設が参加した。また、同試験はPfizer Inc.との共同研究であり、同社から研究費と治験薬パルボシクリブの提供を受けている。製薬企業との共同研究の形式をとり、日本では医師主導治験として、海外では当院が治験依頼者としての役割を担う形で実施する国際共同医師主導治験となる。

試験の結果、統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるPFSの延長を示し、主要評価項目を達成した。

日本のアカデミア主導の国際共同医師主導治験

国際共同試験は、短期間に多くの症例登録を行うことができ、スピーディーな治療開発につながるため、最近は、企業治験治験において国際共同試験が行われる数が非常に多くなっている。アカデミア主導の臨床試験でも、より早く患者に良い治療を届けるという観点では国際共同試験が重要だ。これまでに米国や欧州では、アカデミアの臨床研究グループが主導する国際共同試験が数多く実施され、同センターを含めて日本からこのような海外主導の国際共同試験へ参加する機会も増えてきた。しかし、日本の研究者が発案し、日本の研究機関がリードするような国際共同試験は、言語(英語)の壁、支援スタッフの不足、高額な研究費等の理由により、企画・運営のハードルが高くこれまでほとんど実施されてこなかった。

一方、国立がん研究センター中央病院では、これまで新規治療確立に対するニーズが高いものの製薬企業による新規治療の開発がなかなか進まない疾患に対して、多くの医師主導治験を積極的に実施してきた。さらに2016年度に、国際水準のアカデミア主導治験・臨床研究を日本主導で実施できる体制整備を目的として、医療法上の臨床研究中核病院の中から、同院と大阪大学医学部附属病院の2施設が日本医療研究開発機構(AMED)国際共同臨床研究実施推進事業の拠点施設に選定された。これらの豊富な経験と臨床試験の支援基盤を活用して、これまで日本ではほとんど行われてこなかった、アカデミア主導の国際共同医師主導治験であるPATHWAY試験を実施した。

現在、同院は、アジア地域における臨床研究・治験実施体制整備を目的とした「アジアがん臨床試験ネットワーク構築に関する事業(Asian clinical TriaLs network for cAncerS project:ATLAS project:アトラス プロジェクト」を展開しており、PATHWAY試験の参加地域のみならず、一部のASEAN諸国を含むアジア全域の臨床研究ネットワーク構築を推進している。PATHWAY試験で得られた経験とネットワークはATLASプロジェクトで活用され、引き続きアジア地域全体におけるがん治療開発の発展を目指すとしている。

「本試験のポジティブな結果は、パルボシクリブと内分泌療法の併用療法における、新たなエビデンスとなり、添付文書改訂および薬事承認の取得について規制当局と協議することが可能になると考えられる。欧米に比べてアジア地域では、全乳がんのうちで占める患者数の割合が多く、治療選択肢が少ない閉経前乳がん患者にとって、高いインパクトがある」と、研究グループは述べている。

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