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iPS細胞由来関節軟骨の同種移植、有効性とその分子機構をサルで確認-阪大ほか

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2023年02月24日 AM09:35

これまで他人の移植軟骨が生着するか否かは不明だった

大阪大学は2月20日、別の霊長類個体のiPS細胞から作った軟骨を、膝関節軟骨を欠損した霊長類動物モデルに移植することにより関節軟骨を再生できることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科/大学院生命機能研究科の阿部健吾特任研究員(組織生化学、京都大学大学院医学研究科整形外科学)、妻木範行教授(組織生化学、大阪大学WPI-PRIMe、京都大学iPS細胞研究所CiRA臨床応用研究部門)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

関節軟骨の損傷・変性は、関節痛の原因となる。傷んだ軟骨は自然には治らないため、再生治療が期待されている。しかし、移植して関節軟骨を置き換える、即ち移植物が生着して関節軟骨を直接構築することを示した治療方法は存在していない。

これまでの関節軟骨損傷に対する細胞治療では、移植した細胞自身が修復組織を構成するわけではなく、移植した細胞が分泌する因子がホストの細胞を刺激して修復組織を作らせていることが知られていた。ホスト細胞の修復能は限られているため、細胞治療では関節軟骨の再生に限界があった。また、移植した同種軟骨が免疫拒絶される可能性についてよくわかっていなかった。

同種iPS細胞由来軟骨が軟骨内欠損に生着、霊長類モデルで

軟骨は軟骨細胞と軟骨細胞外マトリックスから成る組織。研究グループは、iPS細胞から軟骨細胞だけでなく軟骨組織までを作り、それを移植して関節軟骨を置き換える新しい再生治療方法を開発している。

今回は、同種移植が可能かを調べるために、ヒトと免疫系が似ているサルを用いて同種iPS細胞由来軟骨を膝関節の軟骨内欠損に移植した。その結果、少なくとも4か月間は生着し、再生組織を直接構成していた。また、免疫反応は起きなかった。

移植後の関節運動がSIK3を介してPRG4を誘導、移植軟骨が関節軟骨として機能

次に、移植後のiPS細胞由来軟骨を採取してシングルセルRNAシーケンス解析を行ったところ、PRG4の発現が移植後に増加したことを発見した。PRG4は関節軟骨表層で作られ、潤滑作用がある。さらに解析を行い、移植後の関節運動がSIK3を介してPRG4を誘導することで、移植軟骨が関節軟骨として働いていることを示唆する結果を得た。

関節軟骨損傷・変性の治療応用に期待

これらの結果により、同種移植の有効性、そしてiPS細胞由来軟骨が生着して再生組織を直接構成すること、移植後に関節軟骨様に再構築される機序が示された。関節軟骨損傷・変性は変形性関節症に進行し、関節痛と関節機能障害を起こす。「現在進行している同治療方法の臨床応用、実用化に向けた研究に貢献することが期待される」と、研究グループは述べている。

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