免疫抑制薬を投与中のNMOSDとMG、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の免疫応答は未解明
大阪大学は2月17日、代表的な自己抗体介在性神経免疫疾患である視神経脊髄炎(NMOSD)と重症筋無力症(MG)におけるSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の免疫応答を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科神経内科学の木原圭梧博士課程大学院生、木下允特任講師、奥野龍禎准教授、望月秀樹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry」にオンライン掲載されている。
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NMOSDとMGはともに自己抗体が関連する神経免疫疾患である。治療には免疫抑制薬の使用が必要な場合がある。免疫抑制薬投与中の他の自己免疫疾患ではSARS-CoV-2 mRNAワクチンの有効性が低下することが報告されているが、NMOSD、MGでの知見は限られていた。また自己抗体介在性神経免疫疾患におけるSARS-CoV-2 mRNAのワクチン接種後の疾患活動性に関連する免疫応答の解明が課題となっていた。
ワクチン接種後の抗体産生は低下していたが、免疫応答は一部維持される
免疫抑制薬を投与中のNMOSDとMG患者では、免疫抑制薬の投与がない他の神経疾患の患者と比較して、2回のSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後のSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する抗体の産生が低下していた。一方で、ワクチン接種後のスパイクタンパク質に特異的なCD4+T細胞や濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)は維持された。このことから免疫抑制薬を内服しているNMOSDおよびMG患者においてもSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種により、SARS-CoV-2の感染防御に寄与する免疫応答が一部維持されることが明らかになった。またこれらの患者ではTfhの分画のうちTfh1が減少しており、Tfh1分画の比率とワクチン接種後のSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する抗体価には正の相関があることを明らかにした。NMOSDやMG患者ではTfh1分画の減少が、ワクチン接種後のSARS-CoV-2に対する抗体産生低下の要因となっている可能性が示唆された。
NMOSD患者ではワクチン接種後にICOSを発現するTfhが増加
一方でNMOSD患者において、NMOSD病態との関連が報告されている血中の抗アクアポリン4抗体価やインターロイキン6濃度、形質芽細胞を含むB細胞の分画はSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種前後で有意な変化はなかったが、ICOS(Inducible T-cell co-stimulator)を発現するTfhがワクチン接種後に増加することがわかった。ICOSを発現するTfhはNMOSDの疾患活動性との関連が過去に報告されている。ただし、今回の研究ではSARS-CoV-2 mRNAワクチンを接種することでNMOSDの再発率が上昇するかについては検討されていない。
「本研究成果により、免疫抑制薬投与中のNMOSD、MG患者においても部分的にSARS-CoV-2ワクチンへの免疫応答が維持されることが確認された。一方で、NMOSDの疾患活動性に関連する免疫変化も確認された。今後、疫学的検討が望まれる」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU