■製薬協が政策提言
日本製薬工業協会は16日、世界に伍する医薬品産業の育成や世界最先端の医療へのアクセス確保のための「政策提言2023」を発表した。特許期間中の革新的新薬の薬価を維持する新たな制度を確立し、創薬力のある企業が生き残る産業構造への転換を促す。岡田安史会長は同日、都内で開いた記者会見で、特許期間の満了後には後発品メーカーに速やかに道を譲り、「日本市場をメリハリのついた魅力あるものに再生していかなければいけない」と改革を訴えた。
岡田氏は、「薬価再算定、革新的新薬の価値を毎年の薬価改定で深掘りし、値下げすることで財政的に長尻を合わせているのが現状」と指摘。日本の医薬品市場が停滞し、海外の新興医薬品企業を中心に日本での開発を回避する傾向が強まったため、ドラッグラグが深刻化していると訴えた。
世界から投資を呼び込むため、主要先進国と同様に、革新的新薬については特許期間中の薬価を維持する一方、特許満了品の後発品置き換えと長期収載品の速やかな価格引き下げを実現することで、「日本の医薬品市場全体で微増」となる姿を掲げた。
岡田氏は、「市場全体として2030年まで毎年1~2%伸びれば、現在の特許品のうち約半分を占める新薬創出等加算品等も毎年4~5%ほどの市場成長を見込める」と見通した。
政策提言では、新たな薬価維持制度として「患者アクセス促進・薬価維持制度」を改めて提案した。▽特許期間中の革新的新薬(加算のある医薬品)を市場実勢価格による改定対象から除外し、シンプルに薬価維持を行う▽上市後に得られたエビデンスやガイドラインにおける位置づけの変化等に基づき価値を再評価し、薬価を見直す――ことが柱となる。
薬価収載時に、現行の類似薬選定基準に加え、疾患の特徴、薬剤の特徴などから総合的に類似薬の有無を判断する仕組みを導入することで、イノベーションの適切な評価を可能とし、原価計算方式による算定を減らす提案だ。
また、医薬品の価値評価について、有効性・安全性の医療的視点にとどまらず、労働生産性の向上や介護負担の軽減など社会保障の持続性の視点で評価する仕組みも新たな薬価維持制度の対象とするよう提言した。
岡田氏は、新薬中心の産業構造に移行するために、特許期間満了後に後発品が安定供給される産業構造が必要不可欠との認識を示し、不採算品目を供給する後発品メーカーの事業構造について「特許満了後は後発品に譲りたいが、今の後発品の産業構造ではなり得ない」と国に抜本改革を求めた。