国内の新型コロナ治療薬やワクチンがオミクロン株「XBB.1.5系統」に有効なのか検証
東京大学医科学研究所は2月14日、新型コロナウイルス・オミクロン株のXBB.1.5系統に対する治療薬とワクチンの効果を検証した結果を発表した。この研究は、同研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Lancet Infectious Diseases」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
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オミクロン株は、主に5つの系統(BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5)に分類される。2023年1月現在、世界的にBA.5系統が流行の主流となっているものの、日本を含む多くの国々で、BA.2系統やBA.5系統から派生したBQ.1.1系統やXBB系統などの変異株の感染例が増えつつある。特に米国では、2022年12月頃からXBB.1.5系統の感染例が急激に増加し、2023年1月末には米国で最も流行している変異株になっている。
国内では、3種類の抗体薬(カシリビマブ・イムデビマブ、ソトロビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ)と4種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル・リトナビル、エンシトレルビル)が、COVID-19に対する治療薬として承認を受けている。
また、国内ではオミクロンBA.4/5株対応のmRNAワクチンの5回目接種が開始されている。しかし、これらの治療薬やワクチンがオミクロン株のXBB.1.5系統に対して有効かどうかについては、明らかにされていなかった。そこで研究グループは今回、患者から分離したXBB.1.5株に対する治療薬の効果、並びに、mRNAワクチンの有効性を調べた。
XBB.1.5株に対する4種類の抗体薬の感染阻害効果はいずれも「低」
はじめに、XBB.1.5株に対する4種類の抗体薬(ソトロビマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ)の感染阻害効果(中和活性)を調べた。その結果、XBB.1.5系統に対する中和活性は、いずれも著しく低いことがわかった。
4種類の抗ウイルス薬の増殖抑制効果は、従来株に対する効果と同程度
続いて、4種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、エンシトレルビル)の効果を解析。その結果、全ての薬剤がXBB.1.5株に対して高い増殖抑制効果を示し、従来株に対する増殖抑制効果と同程度であることが判明した。
XBB.1.5株に対する「BA.4/5株対応2価mRNAワクチン」の有効性を確認
最後に、mRNAワクチン被接種者から採取された血漿のXBB.1.5株に対する中和活性を調べた。その結果、mRNAワクチン4回目の被接種者血漿(4回目接種から1~2か月経過)のXBB.1.5系統に対する中和活性は、従来株、BA.2系統に対する活性より著しく低く、多くの検体で中和活性が検出限界以下だった。
一方、5回目にBA.4/5株対応2価mRNAワクチンを接種した人の血漿(5回目接種から3週間~2か月経過)並びにmRNAワクチンを3回目接種後にBA.2系統に感染した患者(BA.2系統ブレイクスルー感染者)の血漿のXBB.1.5系統に対する中和活性も、従来株やBA.2系統に対する活性よりも顕著に低いことがわかった。しかし、ほとんどの血漿は低いながらもXBB.1.5系統に対する中和活性を有していることが判明。BA.4/5株対応2価mRNAワクチン接種の有効性が明らかになった。
医療現場における治療薬選択や、行政機関での新型コロナ対策をする際の重要情報に
今回の研究を通して得られた成果は、医療現場における適切なCOVID-19治療薬の選択に役立つだけでなく、オミクロン株各系統のリスク評価など、行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定・実施する上で、重要な情報となる。
一方、in vitroにおける中和活性と臨床的な有効性との関係については現時点では明らかではなく、今回の結果が直ちに臨床的な有効性の評価につながるものではない。臨床的な有効性については、今後さらなる研究が待たれる、と研究グループは述べている。
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・東京大学医科学研究所 プレスリリース