「男性の方が重症化しやすい」を一般的な免疫解析技術で解明するのは困難だった
大阪大学免疫学フロンティア研究センター(iFReC)は2月14日、COVID-19急性感染期には抗体産生を調整する濾胞性制御性T細胞(Tfr)の誘導が、男性では女性に比べ抑制されていることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大感染症総合教育研究拠点のJonas Nørskov Søndergaard特任助教、James Wing准教授(IFReCヒト免疫学兼任)らのグループによるもの。研究成果は、「PNAS」(オンライン)に掲載されている。
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新型コロナウイルス感染に対する抗体産生は、COVID-19を防御するために重要な免疫応答の一つだ。これまで、COVID-19による重症化の程度には性差があることが報告されており、男性の方が女性に比べて重症化しやすいといわれてきた。しかし、COVID-19に対する抗体の産生を調整するネットワークは、まれな細胞タイプの複雑な相互作用に基づくため、一般的な技術では解明が困難だった。
マスサイトメトリーで解析に成功、男性では女性に比べてTfrの誘導が抑制
研究グループは今回、免疫細胞を一細胞レベルで高次元に解析できる新しい単一細胞解析法である「マスサイトメトリー」を用いて、COVID-19患者の免疫細胞の状態を詳細にすることに成功した。それにより、COVID-19を発症している時には、抗体産生を適切に調整するのに重要な「濾胞性制御性T細胞(Tfr)」が、すべての患者で減少していることを確認。さらに、この傾向は男性患者でより強く、また女性患者に比べて抗体産生に関わる細胞の数が増加していることも確認できた。
今回の研究成果により、COVID-19における抗体産生を制御する細胞間相互作用をよりよく理解することで、COVID-19による重症化を予測できることが期待できる。また、COVID-19を制御する新しい治療法の開発につながる可能性もある。「男性患者には高いレベルの抗体産生が見られるにも関わらず、重症化することが多いという知見は、COVID-19において男女で異なる治療法の開発につながる可能性がある」と、研究グループは述べている。