低・中所得国を中心に世界70か国・約25万人を解析
順天堂大学は2月13日、アフリカ地域、アメリカ地域、アジア地域の低・中所得国を中心とした世界70か国における孤独感の頻度、その関連要因(性別、いじめられた経験、親友の有無)について、WHOによる思春期世代24万8,017人の調査データを用いて国際比較を行い、その結果を発表した。この研究は、同大医学部小児科学講座の清水俊明教授、公衆衛生学講座の野田(池田)愛准教授らの研究グループと、国立国際医療研究センター、英国ユニバーシティカレッジロンドンの研究者らが共同で実施したもの。研究成果は、「Journal of Adolescent Health」オンライン版に掲載されている。
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思春期世代の孤独感は、飲酒や喫煙、薬物乱用、精神疾患、さらに同年代における主要な死因である自殺との関連が報告されるなど、さまざまに心身の健康へ影響を及ぼすことから、近年注目されている。しかし、これまでの研究は欧米を中心とした高所得国で行われ、アフリカやアジアの低・中所得国における知見は十分ではなかった。
研究グループは今回、WHOが公開している大規模データGlobal School-based Student Health Survey(思春期世代13~17歳、24万8,017人)を使用した。過去12か月に孤独を感じたことが「しばしばある」「常にある」と回答した場合を「孤独」と定義し、その頻度を国毎に算出した。また、関連要因(性別、いじめられた経験、親友の有無)との関連も国毎に算出した。さらにメタアナリシスを用いてWHO地域別の孤独感の頻度、その関連要因との関連を算出した。
孤独感の頻度は特にアフリカ地域や東地中海地域で高値
対象者24万8,017人のうち、11.7%(95%CI:10.6–12.7)が孤独感を感じていた。孤独感の頻度は特にアフリカ地域(13.1%)や東地中海地域(14.7%)で高値だった。関連要因としては、全体で「女子」(vs 男子 有病オッズ比=1.4, 95%信頼区間:1.3–1.4)、「いじめられた経験あり」(有病オッズ比=2.2, 95%信頼区間:2.1–2.3)、「親友がいない」(有病オッズ比=1.8, 95%信頼区間:1.7–1.9)生徒において孤独感が高く、特にいじめられた経験と孤独感の関連はほぼ全ての参加国で認められた。
関連要因は国毎に相違がある一方、いじめられた経験はほぼ全ての国で孤独感と関連
今回の研究により、低・中所得国でも思春期世代の多くが孤独感を感じていたことがわかった。孤独感の関連要因には国毎に相違があり、各国の背景にあわせた介入策を講じる必要がある。「一方、いじめられた経験はほぼ全ての国で孤独感と関連したことから、思春期世代の孤独感の対策には、いじめ対策が世界共通の対策として有効である可能性が示唆される」と、研究グループは述べている。
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