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子の先天性心疾患発生リスクに関連の父親の職業性ばく露、エコチル調査結果-阪大ほか

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2023年02月13日 AM09:44

2万8,866人対象、化学物質への職業性ばく露頻度と子の先天性心疾患発生リスクを検討

大阪大学は2月7日、父親2万8,866人を対象に、化学物質への職業性ばく露が生まれた子どもの先天性心疾患の発症に与える影響について解析を行った結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の磯博康招へい教授(環境医学/・大阪ユニットセンターユニットセンター長補佐/国立国際医療研究センター国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Environmental Health and Preventive Medicine」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、エコチル調査)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

先天性心疾患は主要な先天性疾患の一つで、アジアでは先天性心疾患の頻度がヨーロッパに比べ多いことが報告されている。これまでに、父親の化学物質ばく露と子どもの先天性心疾患発生との関連を示唆する報告がいくつかあったが、大規模な前向き研究はなかった。そこで、同研究では、大規模な出生コホートであるエコチル調査により、父親の化学物質への職業性ばく露の頻度が、生まれた子どもの先天性心疾患発生リスクに影響するかどうか検討した。

今回の研究では、父親の自記式質問票に有効な回答があった2万8,866人を対象とした。化学物質への職業性ばく露については、パートナーの妊娠が判明するまでの約3か月間に父親が仕事で半日以上かけて使用した頻度を回答してもらい、「不使用」「月1~3回」「週1回以上」の3群に分類した。また、出生時の医療記録から生まれた子どもの先天性心疾患の有無の情報を得た。ロジスティック回帰分析を用いて、生まれた子どもの先天性心疾患の発生リスクについて職業性ばく露別の頻度のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出。なお、交絡因子として両親の年齢、先天性心疾患の既往歴、糖尿病(母親は糖尿病または妊娠糖尿病)、教育歴、喫煙習慣、飲酒習慣、BMI(母親は妊娠前のBMI)、母親のてんかん、結合組織疾患、風疹、薬剤使用歴、および世帯収入を調整した。

コピー機・レーザープリンタなど「週1回以上」、リスク増と関連

研究の結果、2万8,866人の生存児のうち、120人に先天性心疾患の発生があった(発生率4.16/1,000)。コピー機・レーザープリンタ(OR=1.38、95%CI:1.00–1.91)、水性ペイント・インクジェットプリンタ(OR=1.60、95%CI:1.08-2.37)の使用が「週1回以上」の場合、使用のない場合と比べて、生まれた子どもの先天性心疾患の発生リスクが高くなった。

エンジンオイル、はんだなど鉛を含む製品など「月1~3回」、リスク増と関連

また、エンジンオイル(OR=1.68、95%CI:1.02–2.77)、はんだなど鉛を含む製品(OR=2.03、95%CI:1.06–3.88)、無鉛はんだ(OR=3.45、95%CI:1.85–6.43)、微生物(OR=4.51、95%CI:1.63–12.49)の使用が「月1~3回」の場合、使用のない場合と比べて先天性心疾患の発生リスクが高くなった。これらの物質は、その他の物質と組み合わさってばく露した場合も同様の結果が認められた。

有機溶剤など、その他の物質と組み合わさって「月1~3回」、リスク増と関連

さらに、有機溶剤(OR=1.69、95%CI:1.04-2.74)、塩素系漂白剤・殺菌剤(OR=1.57、95%CI:1.00-2.46)も、その他の物質と組み合わさって「月1~3回」使用した場合、使用のない場合と比べて先天性心疾患の発生リスクが高くなった。

研究の限界点として、客観的な指標を用いたものではない

今回の研究の結果から、コピー機・レーザープリンタ、水性ペイント・インクジェットプリンタの「週1回以上」の職業性ばく露は生まれた子どもの先天性心疾患の発生リスク増加と関連していることが示された。また、エンジンオイル、はんだなど鉛を含む製品、無鉛はんだ、微生物の「月1~3回」の職業性ばく露は、生まれた子どもの先天性心疾患の発生リスク増加と関連していることが示された。これらの物質は、その他の物質と組み合わさってばく露した場合も同様の結果が認められた。さらに、有機溶剤、塩素系漂白剤・殺菌剤も、その他の物質と組み合わさって「月1~3回」ばく露した場合、生まれた子どもの先天性心疾患の発生リスク増加と関連していることが示された。エンジンオイル、はんだなど鉛を含む製品、無鉛はんだ、微生物が「週1回以上」ではなく「月1~3回」のばく露で先天性心疾患のリスクの増加と関連していた理由としては、定期的(週1回以上)にばく露する人の数が少なく、子どもの先天性心疾患の症例が限られていることが考えられる。また、日本ではこれらの職業性ばく露に対して、厳しい対策が行われている背景が推察されるという。

同研究の限界点として、化学物質等の使用やその頻度は、質問票によって評価したものであり、生体試料(血液中や尿中)の化学物質濃度(ばく露量)などの客観的な指標を用いたものではないことが挙げられる。そのため、客観的な指標を用いた調査を今後進める、と研究グループは述べている。

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