近年普及している半月板温存手術、亜全摘と比べた治療成績や軟骨保護作用は?
大阪公立大学は2月8日、外側円板状半月板損傷に対して、後節半月板を亜全摘手術した場合、術後の軟骨変性を最も進行させることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科整形外科学の橋本祐介講師、中村博亮教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery」にオンライン掲載されている。
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外側円板状半月板とは、半月板の通常の形態である三日月型ではなく、円板状の形をした外側半月板のことで、日本をはじめアジア系の人種に多いといわれている。また、若年者の半月板損傷の多くは円板状半月板が原因であるともいわれている。
半月板は一旦損傷すると修復されない。しかし、損傷した半月板を取ってしまうと膝の変形が進行し、痛みがひどくなる時がある。日本で頻度の高い外側円板状半月板の多くは半月板の質が悪く、治る見込みがないと考えられていた。これまでの治療として、半月板の損傷部分を亜全摘する手術方法が普及していたが、近年では辺縁部を縫合する半月板温存手術が普及し始めている。しかし、辺縁部を縫合した方が辺縁部まで切除した亜全摘より成績が良いか、軟骨保護作用があるか、また前方、後方の辺縁部のどちらを残す方が大事なのかなど、不明な点が多くあった。
15歳以下の患者で、後方の亜全摘群は縫合群に比べて軟骨変性が強く出現と判明
今回研究グループは、15歳以下の外側円板状半月板損傷患者41人を対象に、半月板辺縁部分が損傷しているために半分以上半月板を切除した亜全摘群と、辺縁部を縫合する形成縫合群の軟骨変性を比較した。その結果、亜全摘群の方が術後に軟骨変性が進んでいることがわかった。
さらに損傷部位(前方、後方)の部位別で亜全摘群と形成縫合群の軟骨変性を比較したところ、前方の亜全摘群は縫合群とそれほど差がなかったが、後方の亜全摘群は縫合群に比べて軟骨変性が強く出ることがわかった。
若年者であれば半月板の変性が少々強くても、縫合して温存する方が軟骨を保護できる
研究により、若年者であれば半月板の変性が少々強くても縫合して温存することにより、軟骨を保護できることがわかった。特に後節を残存させることが膝機能を保ち、加齢的変化を進行させないために重要であることがわかった。「今後はこの方法を全国的に広めていくことを目標にしたい。縫合方法や切除量などの課題に取り組む予定」と、研究グループは述べている。
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