抗補体C5リサイクリング抗体、既存薬とは異なる部位で結合
中外製薬株式会社は2月7日、クロバリマブについて、補体阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria)患者対象に有効性および安全性を評価する第3相国際共同臨床試験COMMODORE 2試験において良好な結果が得られたと発表した。研究成果は、今後の医学学会にて発表予定としている。
クロバリマブは、中外製薬が開発したリサイクリング抗体技術を用いた抗補体C5リサイクリング抗体。リサイクリング抗体は、抗原結合部位にpH依存性を持たせることで、1分子の抗体が繰り返し抗原に結合し、一般的な抗体に比べて長時間にわたり効果を発揮するようデザインされている。同剤は、補体系で重要な役割を担うC5を標的にすることで補体の活性化を制御するとともに、皮下注射による治療で患者および介護者の負担軽減をもたらすことが期待されている。クロバリマブは既存薬とは異なる部位で補体C5に結合することから、既存の抗体医薬品が結合しない特定のC5遺伝子変異を有する患者(日本人PNH患者の約3.5%)において有効な治療選択肢となり得る。
クロバリマブ(4週ごと皮下投与)、エクリズマブ(2週ごと静脈投与)に対する非劣性を検証
COMMODORE 2試験は、C5阻害剤による治療歴のないPNH患者を対象に、エクリズマブに対するクロバリマブの有効性および安全性を評価するランダム化非盲検第3相試験。同試験の有効性に関する2つの主要評価項目は輸血回避および溶血(LDH値により測定される進行中の赤血球破壊)のコントロールだ。同試験に登録された成人被験者は2:1の比で4週ごとのクロバリマブ皮下投与群または2週ごとのエクリズマブ静脈投与群にランダムに割り当てられた。18歳未満の被験者は非ランダム化群に含まれ、4週ごとにクロバリマブが皮下投与された。
輸血回避・溶血コントロールを達成
同試験の結果、2つの主要評価項目が達成された。この結果により、開発中の新規抗補体C5リサイクリング抗体クロバリマブ(維持用量として4週間ごとに皮下投与)による疾患コントロールが達成され、現在の標準治療薬の1つであるエクリズマブ(2週間ごとに静脈内投与)に対する非劣性が検証された。既存の補体阻害剤からクロバリマブに切り替えたPNH患者を対象としたもう一つの第3相国際共同臨床試験であるCOMMODORE 1試験の有効性および安全性のデータも、ピボタルなCOMMODORE 2試験の良好なベネフィット・リスクプロファイルを支持するものだった。
両試験のデータは世界各国の規制当局への提出が予定されている。中国で実施された第3相COMMODORE 3試験の肯定的なデータは、2022年12月10日に米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会において発表された。同試験データは中華人民共和国国家薬品監督管理局(NMPA:National Medical Products Administration)にBreakthrough Therapy指定のもと提出され、承認に向けた優先審査品目に指定されている。
なお、クロバリマブは現在、PNHのほかに、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS:atypical hemolytic uremic syndrome)、鎌状赤血球症(SCD:sickle cell disease)に対して臨床試験を実施している。加えて、ループス腎炎に対する海外臨床試験の開始に向けて準備中だ。
▼関連リンク
・中外製薬株式会社 プレスリリース