がんや中枢神経疾患の疾患細胞に見られる修飾塩基の異常、バイオマーカーとして利用可能
東京工科大学は2月8日、がんなどのバイオマーカーとしての利用が期待される、ゲノムDNA中の種々の修飾塩基を簡便に検出できる発光タンパク質の構築法を開発したと発表した。この研究は、同大応用生物学部の吉田亘准教授、東京農工大学大学院工学研究院の浅野竜太郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Analytical Chemistry」にオンライン掲載されている。
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ヒトゲノムDNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4塩基で構成されており、これら塩基は遺伝子の発現など種々の生命現象を制御するために種々の修飾を受けることが知られている。ヒトゲノムDNA中で最も多く含まれる修飾塩基は5-メチルシトシンであり、CとGの連続配列中のCがメチル化されることにより生じる(メチルCpG)。さらに、5-メチルシトシンが連続的に酸化されることにより、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシシトシンが生成される。これら修飾状態は組織、細胞特異的に形成され、それら組織、細胞の機能を維持するために必須である。がんや中枢神経疾患などの疾患細胞においては、これら修飾塩基の状態が異常になっているため、種々の疾病のバイオマーカーとして利用可能である。
研究グループは、修飾塩基に特異的に結合するタンパク質にホタルの発光タンパク質を融合させ、これにゲノムDNAを混合するだけで標的修飾塩基を測定する方法や、ホタルとは発光色の異なるタンパク質を用いて、同時に2種類の修飾塩基を測定する方法をこれまでに開発している。これらの成果をもとに、今回の研究では室温で静置するだけで自発的にタンパク質間を連結することができる方法を用いて、修飾塩基を認識するタンパク質と発光タンパク質を任意の組合せで連結させ、種々の修飾塩基を測定できる方法を開発することを目的とした。
室温混合で自発的に連結するタンパク質を用い、DNA中のメチル/非メチルCpGを測定可能に
今回の研究では、室温で混合するだけで自発的に連結されるタンパク質である「SnoopTag(SnT)」と「SnoopCatcher(SnC)」を利用した。まず、メチルCpG結合タンパク質(MBD)にSnT(MBD-SnT)、非メチルCpG結合タンパク質(CXXC)にSnT(CXXC-SnT)、SnCに発光タンパク質(SnC-Luc)を融合した各種タンパク質を組換え生産した。これらをそれぞれ混合して室温で1時間静置したところ、自発的に連結されることが確認された。次に、これら連結産物を用いて、ヒトゲノムDNA中のメチルCpGと非メチルCpGを測定できるかを検討した。発光タンパク質の発光で励起されるDNAインターカレーターを結合させたゲノムDNAに、MBD-SnT-SnC-LucまたはCXXC-SnT-SnC-Lucを添加し、さらに光タンパク質の発光基質を添加した。その結果、MBD-SnT-SnC-LucはヒトゲノムDNA中のメチルCpG部位で、CXXC-SnT-SnC-Lucは非メチルCpG部位で発光し、近傍のDNAインターカレーターを励起することが示された。つまり、これら蛍光強度を測定することで、メチルCpGと非メチルCpGを測定できることが示された。
修飾塩基状態の異常が見られる病気を簡易に診断することが可能になると期待
修飾塩基を認識するタンパク質にSnTを、発光タンパク質にSnCを融合させたタンパク質を調製すれば、それらを混合するだけで、任意の組合せの修飾塩基を認識する融合発光タンパク質を構築できることが示された。「このタンパク質を用いることにより、ヒトゲノムDNA中の標的修飾塩基を簡便に測定することが可能になり、これら修飾塩基状態が異常になる疾病の簡易診断が可能になると期待される」と、研究グループは述べている。
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・東京工科大学 プレスリリース