融合遺伝子FN1-FGFR1、FN1-FGF1が検出されないPMTの病態は未解明だった
名古屋大学は2月7日、腓骨に発生した腫瘍性骨軟化症の原因腫瘍である骨芽細胞腫様リン酸塩尿性間葉系腫瘍(骨芽細胞腫様PMT)に対して遺伝子解析を行い、現在までに報告されていないNIPBL-BEND2融合遺伝子を発見したと発表した。この研究は、同大医学部附属病院希少がんセンターの酒井智久病院助教、リハビリテーション科の西田佳弘病院教授、名古屋市立大学大学院医学研究科ウイルス学分野の奥野友介教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in oncology」にオンライン掲載されている。
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腫瘍性骨軟化症を引き起こす原因腫瘍であるリン酸塩尿性間葉系腫瘍(PMT)は全身の骨・軟部ともに発生しうる非常にまれな間葉系腫瘍であり、骨芽細胞様PMTはその一種である。80%程度の症例で線維芽細胞増殖因子23(FGF23)を産生し、腎尿細管でのリンの再吸収を阻害することで腫瘍性骨軟化症を引き起こすと報告されている。PMTにおける融合遺伝子は2015年にFN1-FGFR1が初めて報告され、現在までにFN1-FGFR1とFN1-FGF1が報告されている。これらの融合遺伝子はFGF1-FGFR1シグナル経路に関与しFGF23の過剰産生をもたらすと考えられており、約半数のPMT症例で融合遺伝子FN1-FGFR1またはFN1-FGF1が検出されたと報告されているが、これらの融合遺伝子が検出されないPMTの病態は明らかになっていない。
一例から発見された新規融合遺伝子NIPBL-BEND2、導入した細胞株で有意な増殖
研究グループは、PMTの病態解明を目的として高FGF23血症を伴う腓骨発生骨芽細胞様PMTの一例に次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を行った。RNAシーケンス解析の結果、FN1-FGFR1およびFN1-FGF1は検出されなかったが、新規融合遺伝子NIPBL-BEND2が検出された。NIPBL-BEND2融合遺伝子をクローニングしHEK293T細胞株に導入したところ、導入を行っていない細胞株と比較して有意な細胞の増殖を認め、Gene set enrichment analysisではMYCシグナル伝達経路関連遺伝子の有意な発現上昇を認めた。また、骨芽細胞系の細胞株であるMG63においても融合遺伝子NIPBL-BEND2を導入することで有意な細胞の増殖を認めた。
これまでに報告されていない病因の可能性を示唆
骨芽細胞様PMTにおいて検出された新規融合遺伝子NIPBL-BEND2はMYCシグナル伝達経路を介して細胞の増殖に関与していることが示唆され、今までに報告されているFN1-FGFR1またはFN1-FGF1融合遺伝子を認めないPMTの病因の一つである可能性がある。「一例での検出のみであり、今後より多くの症例での検証、機能の解析を行う必要がある」と、研究グループは述べている。
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