英国のコロナ水際対策は機能しなかった?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大阻止を目的に英国で実施された入国制限が、あまり機能していなかったことを示唆する研究結果が報告された。英国に到着する飛行機のトイレや到着ターミナルの下水を採取して分析した結果、ほとんどのサンプルから重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が検出されたという。
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この研究は、英バンガー大学のDavey Jones氏らによるもので、詳細は「PLOS Global Public Health」に1月19日掲載された。同氏は、「英国政府は、COVID-19罹患者が英国に到着する航空機に搭乗することを防ぐために、さまざまな対策を講じた。それにもかかわらず、分析したほぼ全ての排水や下水からウイルスが検出された」と、大学発のリリースの中で述べている。水際対策がうまくいかなかった理由としては、「搭乗する前の検査結果では陰性だったがその後に発症し、入国制限を回避して入国できたケースや、それ以外の可能性もある」とのことだ。同氏は、「いずれにしてもわれわれの研究結果は、他国から患者が流入するのを抑え込むという対策が失敗だったことを示している」と語っている。
Jones氏らは、2022年3月8~31日に、英国の3カ所の国際空港(ヒースロー空港、エディンバラ空港、ブリストル空港)に到着した航空機のトイレの排水タンクと、到着ターミナルの下水からサンプルを採取して分析。その結果、ヒースロー空港とブリストル空港の到着ターミナルの下水から採取された全てのサンプル、およびエディンバラ空港の下水から採取されたサンプルの85%は、SARS-CoV-2陽性だった。また、航空機のトイレ排水のサンプルも、93%が陽性だった。この事実は、英国に入国する乗客や乗員、空港スタッフのCOVID-19の有病率が低いものではなかったことを物語っている。
なお、排水や下水のサンプル採取期間中の3月18日に、「ワクチン接種を受けていない乗客は、現地出発前と英国到着の2日後に感染の有無を確認するための検査を要する」という措置が解除された。この日の前後で二分して、サンプルからのウイルス検出率を比較したところ、有意な変化は見られなかった。
Jones氏らの研究チームが以前に行った、成人2,000人を対象とする調査では、回答者の23%が「体調が良くない時に英国に向かう航空機に搭乗したことがある」と答え、また短距離フライトでは13%、長距離フライトでは36%が、機内のトイレを「利用する」と回答した。これらのデータから同研究チームは、排水の分析によって、英国に入国するCOVID-19患者の8~14%を捕捉できるのではないかと推測。また、この手法はCOVID-19だけでなく、ノロウイルスやエンテロウイルスなどの他の感染症の拡大状況をモニタリングする手法としても応用できるとしている。
論文の筆頭著者である同大学のKata Farkas氏は、「下水中の微生物のモニタリングを、新たな疾患の流行に対して英国の医療システムが備える、または感染拡大前にその警告を発出し得るレベルに発展させるには、全国的な規模でサンプリングを行う必要がある」としている。ただし、「英国に到着する全航空便を検査対象にすることは現実的ではないが、一部を調べることでも、海外から侵入してくる病原性微生物の国内での感染拡大の予測に役立つのではないか」とも述べている。
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