東京都大田区で飲食業者にアンケート調査、COVID-19対策情報収集手段と有効性を評価
東邦大学は1月31日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下で発信された感染予防対策に関わる情報が適切に対象者に届いているかを評価すべく、東京都大田区の飲食サービス業者を対象にアンケート調査を実施した結果を発表した。この研究は、同大医学部地域連携感染制御学講座の塩沢綾子助教、同大医療センター大森病院臨床検査部の荻原真二氏(研究当時:東邦大学医学部地域連携感染制御学講座助教)、同大医学部地域連携感染制御学講座の石井良和教授、同大医学部地域連携感染制御学講座の舘田一博教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Public Health in Practice」に掲載されている。
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新興感染症の流行時には、健康危機管理のために情報管理が不可欠だ。COVID-19流行下で、飲食サービス業者では徹底した感染予防対策が要求され、さまざまな媒体から発信された。しかし、発信された情報を受け取り手である飲食サービス業者は「手に入れやすい、わかりやすい」と感じていたのだろうか。今回の研究開始前、研究グループは大田区の飲食サービス業者から「欲しい情報にたどりつきにくい」「入手した情報の解釈が難しい、誤解してしまっていた」といった声を聴いていたという。COVID-19流行下で生じたインフォデミックの様相を呈していた。
そこで、研究グループは大田区の飲食サービス業の従事者を対象にアンケート調査を実施。COVID-19に対する感染予防対策のために利用する情報収集手段(テレビ、新聞、ラジオ、地域広報誌、雑誌、公共掲示板、ガイドラインや指示書、インターネット(静画・動画))とその有効性を評価することを目的とした。対象者に、感染予防対策のためにどのような情報収集手段を利用しているか、どの程度理解しているか、現在利用していない情報収集手段は何か、その理由は何か、等を尋ねた。
情報収集手段の最多はテレビ88.0%、ガイドラインは38.9%
調査の結果、情報収集手段として最も多かったのはテレビの利用で88.0%。ガイドラインの利用は38.9%に留まった。全ての情報収集手段において、検索した情報がわかりづらいと回答した群では、「具体的な行動が思いつかないこと」という理由が最も多く見られた。
60歳以上は、ガイドラインやインターネットを利用しにくい傾向
情報収集手段を利用しない理由としては、「必要な情報を抽出するのに時間がかかりすぎること」が全ての情報収集手段の中で最も高い比率となった。年代別に見ると、60歳以上の年代では、ガイドライン(オッズ比(OR),0.58;95%信頼区間(CI),0.41–0.83)やインターネット(OR,0.21;95%CI,0.14–0.30)を利用しにくい傾向が見られた。
飲食可能店舗でガイドライン利用しない群「必要情報抽出に時間がかかりすぎる」
また、特に飲食可能な店舗でガイドラインを利用しない群では「必要な情報を抽出するのに時間がかかりすぎること」と感じやすい傾向(OR,2.12;95%CI,1.01–4.43)があったとわかった。
情報発信者は、具体的な表現・レイアウト改善など工夫を
今回のアンケート調査結果から、現在のCOVID-19感染予防対策に関する情報発信方法では、情報が十分に理解されなかったり、対象者に届かなかったりする可能性があることが明らかになった。COVID-19の情報を対象とする相手と効率よく共有するためには、情報の発信者がより具体的な表現を用いたり、紙面や画面のレイアウトを改善したりする必要があると考えられる。また、60歳以上の年代に対して、COVID-19感染予防対策に関する情報はインターネット上での発信のみでは届かない可能性がある。そのため、紙媒体も併用するなどの工夫をすることが求められる、と研究グループは述べている。
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・東邦大学 プレスリリース