早産は学業成績やIQの低下に関連
早産児では正期産児に比べて、後の学業成績が低くなる可能性があるようだ。在胎34週未満で生まれた児では40週で生まれた児に比べて、10代での数学と国語の成績が低いことが、国立血清学研究所(デンマーク)のAnders Husby氏らが実施した研究で示された。詳細は、「The BMJ」に1月18日掲載された。
画像提供HealthDay
世界では、年間約1500万人の児が早産(在胎37週未満)で生まれてくる。研究チームによると、妊娠後期の数週間は、胎児の脳の発達に重要な期間であり、早産はその後の脳機能に悪影響を及ぼすと考えられているという。
この研究では、デンマークで1986年1月1日から2003年12月31日の間に出生し、同期間の間に同じ両親から生まれたきょうだいが1人以上いる79万2,724人のデータを用いて、在胎週数と認知能力との関連を、遺伝および母親の知能についても考慮した上で検討した。認知能力は、義務教育の最終学年時(9年生、15〜16歳)の国語と数学の成績を標準化して(zスコア)評価した。男のきょうだいのいる男児では、主に18歳のときに徴兵検査の一環として受けた知能検査の結果も解析に組み入れた。
対象者のうち、4万4,322人(5.6%)が在胎37週未満で出生していた。性別、出生体重、先天性異常、出生時の親の年齢・学歴、年長のきょうだいの数、きょうだい間で共有する家族因子で調整して解析した結果、これらの児のうち、在胎34週未満で生まれた児と41週超で生まれた児では、40週で生まれた児に比べて数学の平均スコアが有意に低かった。在胎34週未満の児では、在胎週数が短いほど成績が低い傾向が認められた。国語のテストでは、在胎40週で生まれた児に比べて、27週以下の児でのみ成績の低下が認められた。
男のきょうだい22万7,403人からなるコホートの知能検査の結果と在胎週数との関連を検討したところ、上記のメインコホートを対象とした解析結果と同様の結果が得られた。具体的には、40週で生まれた児に比べて、34週以降に生まれた早産児では1ポイント未満、32~33週で生まれた児では2.4ポイント、28~31週で生まれた児では3.8ポイント、27週以下で生まれた児では4.2ポイント、それぞれIQが低かった。
ただしHusby氏らは、「認知能力は出生時に決まるものではなく、社会環境や育てられ方に大きく影響される。早産児への早期介入が重要なのはこの理由からだ」と述べている。
またHusby氏らは、研究の限界点として、本研究が観察研究であり、因果関係を明らかにするものではないことと、妊娠中の喫煙などに関するデータが欠如していることを挙げ、「早産による影響を防ぐ方法についてはさらに研究を重ねる必要がある」と述べている。
マギル大学(カナダ)医学・健康科学部のSeungmi Yang氏らは、本研究論文の付随論評の中で、「親と臨床医は、早産が学習障害や認知機能障害と関連する可能性があることを認識しておくべきだ。その一方で、早産児、特に妊娠後期に生まれた児と正期産児との差は問題とするほどのものではないことが示された今回の結果は、親を安堵させることだろう。早産の原因はほとんど解明されていないため、影響を軽減するには、その他の社会環境因子を特定して改善する方が、成功する見込みが高いかもしれない」との見方を示している。
Copyright c 2023 HealthDay. All rights reserved.
※掲載記事の無断転用を禁じます。
Photo Credit: Adobe Stock