長期収載品の薬剤費は1兆8000億円を占める。後発品の数量シェアは80%にほぼ到達しているが、特許切れ後医薬品の金額シェアを見ると、長期収載品が59%、後発品が41%と改善の余地がある。
この日の検討会では、従来のような長期収載品の薬価特例引き下げや診療報酬上の対応で後発品使用推進策を進めても長期収載品から後発品への切り替えは難しいとの意見が相次いだ。
三村優美子構成員(青山学院大学名誉教授)は、「従来品の後発品問題で長期収載品に貴重な薬がある。(後発品が使われていない)難病など市場規模が小さい領域、輸液など複雑な製造設備を要する薬剤、外用剤などで今後後発品に切り替える政策を続けられると思うが、それが適当なのか安定供給の面で慎重に検討していく必要がある」と語った。
香取照幸構成員(上智大学総合人間学部社会福祉学科教授)は、「後発品が80%になっている状況をどう理解するか。様々な理由で後発品が参入しない、長期収載品を求める患者の選択がある中、何のために後発品割合を上げるのかという議論がある」と述べた。
低分子医薬品について、「長期収載品から後発品への切り替えによって、当初考えてきた医療費適正化のゴールに達したと考えると次は何になるのか」と提起し、目標設定の見直しが必要との考えを示した。
また、長期収載品に売上を依存する製薬企業の収益構造についてもデータが示された。長期収載品を扱う全企業のうち、売上全体に対する長期収載品の売上比率が50%を超える企業が約2割、新薬創出等加算品目を取り扱う企業では約1割存在しており、先発品メーカーの約半数は新薬創出等加算品目を保有していなかった。
菅原琢磨構成員(法政大学経済学部教授)は、「長期収載品を売らないと投資回収ができない実態がある。画期的な新薬開発が難しくて、特許期間中に十分な回収ができず長期収載品に頼っているのではないか」と指摘した。
これら意見に対し、坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大学大学院教授)は、「長期収載品に依存せず高い創薬力を持つ産業構造が国の目指す方向性」とした上で、「長期収載品に戻すという議論に聞こえる。新薬を開発し、次の新薬に投資するビジネスモデルに転換できない企業は仕方ないと思う」との考えを示した。