IL6受容体Gp130を子宮上皮細胞で欠損のマウス作製、胚着床に与える影響を検討
麻布大学は1月27日、妊娠の成立に重要な胚着床の機構を、遺伝子改変マウスを用いた解析により明らかにしたと発表した。この研究は、同獣医学研究科動物応用科学専攻の並木貴文博士課程後期大学院生(研究当時、現:京都大学iPS細胞研究所博士研究員)、同大獣医学部の野口倫子准教授、村上裕信講師、寺川純平講師、伊藤潤哉教授、柏崎直巳教授ら、かずさDNA研究所の長谷川嘉則博士、小原収博士、金沢大学の大黒多希子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific reports」に掲載されている。
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ヒトの不妊症や畜産動物の受胎率の低下は、大きな社会問題となっている。しかし、有効な診断法や治療法の確立には至っていない。体外受精や顕微授精等の技術を用いて作製した受精卵(胚)の約40〜80%は受胎できないことが報告されており、受胎率向上のためには、母体側の環境を妊娠に適した状態へと整えることが重要だ。
胚着床は、子宮に到達した受精卵(胚)が子宮内膜の上皮細胞に接触し、その後接着因子により上皮と接着する過程を経て成立する。また、ヒトやマウスでは、その後胚が子宮内膜に浸潤する過程へと続く。胚着床の過程は、卵巣から分泌されるプロゲステロン(いわゆる黄体ホルモン)とエストラジオール(いわゆる女性ホルモン)の2つのホルモンの作用によって誘起される。これらのホルモンは、サイトカインなどの分泌を促し、炎症反応を引き起こすことで胚着床を成立させると考えられているが、その詳細な仕組みはわかっていない。
今回、研究グループは、子宮の上皮細胞でインターロイキン6(IL6)ファミリーサイトカインの受容体(Gp130)遺伝子を欠損したマウスを作製し、胚着床に与える影響を検討した。
Gp130欠損マウス、下流シグナル伝達異常で胚接着不全となり完全不妊に
解析の結果、子宮上皮細胞でGp130を欠損したマウスでは、胚着床に向けた子宮の形態学的な変化は起こるものの、胚接着の不全による完全な不妊となることが判明。Gp130を子宮上皮で欠損したマウスでは、下流のシグナル伝達が正しく行われず、子宮でのホルモン応答性の低下、免疫細胞の子宮内膜への浸潤、上皮細胞の胚接着に向けたリモデリングの異常が認められることが明らかになった。
今回の研究結果から、子宮上皮に存在するGp130を起点としたシグナル伝達が、胚着床の成立に重要であることが示唆された。同研究結果は、ヒトや産業動物における胚着床機構の解明につながり、不妊症の原因究明に役立つと考えられる、と研究グループは述べている。
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・麻布大学 プレスリリース