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ヒトの持久運動パフォーマンス向上に貢献する腸内細菌を発見-慶大先端研ほか

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2023年01月27日 AM11:16

個々の腸内細菌による運動パフォーマンスへの関与やメカニズムは不明だった

慶應義塾大学先端生命科学研究所は1月26日、ヒトの腸内細菌の1種「(バクテロイデス ユニフォルミス、以下B. uniformis)」が持久運動パフォーマンスを向上させること、また、この腸内細菌が栄養源として利用しやすい環状オリゴ糖「α-シクロデキストリン」を摂取することで、ヒトの持久運動パフォーマンスも向上できることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授(順天堂大学大学院医学研究科細菌叢再生学講座特任教授・神奈川県立産業技術総合研究所腸内環境デザイングループグループリーダー・ ERATO副研究総括を併任)と、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社の森田寛人研究員、狩野智恵研究員、青山学院大学の内山義英教授、原晋教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Science Advances」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

腸内細菌で構成される微生物集団は腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれ、そのバランスがヒトの健康や疾患に大きな影響を与えていることが報告されている。トップアスリートの腸内フローラは、そうでない人々よりも多様性に富んだ腸内細菌で構成されていることが報告されていたが、個々の腸内細菌による運動パフォーマンスへの関与やメカニズムなどは、ほとんど明らかになっていなかった。

アスリートの腸内にB. uniformisが多く棲息、菌数が多いほど3,000m走行タイムが早い

研究グループは今回、研究趣旨を理解し協力の承諾を得た青山学院大学陸上競技部(長距離ブロック)に所属する48人の男性学生(以下、アスリート群)と、同年代の一般男性10人の腸内フローラの比較調査を行った。

その結果、アスリート群の腸内にはB. uniformisが多く棲息することが明らかとなった。さらに、アスリート群のうち3,000mの走行タイムを提供した25人について、腸内フローラにおけるB. uniformisの菌数(同研究では16SrRNA遺伝子1コピーを1菌数と定義)と3,000m走行タイムの関連を調べたところ、B. uniformisの菌数が多い人ほど3,000mの走行タイムが早いという相関関係を見出した。

B. uniformisが好むα-シクロデキストリンの摂取で、持久運動パフォーマンスや疲労感が改善

B. uniformisは一般的にヒトの腸内に棲息する腸内細菌であることから、この腸内細菌が利用可能な環状オリゴ糖であるα-シクロデキストリンの摂取が運動へ与える影響を調べるため、運動習慣がある20~40歳代の日本人一般男性10人にα-シクロデキストリンを含むサプリメントを摂取してもらった(α-シクロデキストリン摂取群)。

その結果、摂取8週間後においてB. uniformisの菌数が摂取前と比較して有意に増加することが明らかとなった。さらにα-シクロデキストリン摂取群では、エクササイズバイクで10kmを漕ぐために必要なタイムが摂取前と比較して約10%短縮し、このタイムはプラセボを摂取した群(11人)のタイムと比較しても有意に早いタイムだったという。また、α-シクロデキストリン摂取群ではエクササイズバイクを50分間漕いだ直後の疲労感が摂取前と比較して有意に低下した。これらの結果から、B. uniformisが好むα-シクロデキストリンの摂取は、ヒトの持久運動パフォーマンスや運動後の疲労感を改善させることが明らかになった。

また、B. uniformisによる持久運動パフォーマンス向上のメカニズムとして、この腸内細菌によって腸内で産生される酢酸とプロピオン酸が運動中の肝臓におけるグリコーゲン分解と糖新生を促進し、運動に必要なグルコースを全身に供給していることが示唆された。

B. uniformisのスポーツ分野や飲食料品分野への応用に期待

今回の研究成果により、B. uniformisが持久運動パフォーマンスに関与していることが初めて明らかにされた。また、この腸内細菌が好む環状オリゴ糖を摂取することで、ヒトの持久運動パフォーマンスを向上できることも明らかになった。

「これらは、B. uniformisをターゲットとしたプレバイオティクスやプロバイオティクス、オールバイオティクス(R)を用いることによってヒトの運動パフォーマンスを引き上げることができる可能性を示唆するもので、将来的にはスポーツ分野や飲食料品分野への応用が期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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