高尿酸血症が後年の心房細動リスクに関連――AHAニュース
中年期に尿酸値が高いとその数十年後に、不整脈のリスクが大幅に上昇する可能性を示唆する研究結果が、「Journal of the American Heart Association」に1月12日掲載された。尿酸値の高いことが、血栓症や脳卒中、心不全などにつながる心房細動の発症に重要な役割を果たしている可能性が考えられるという。
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論文の筆頭著者であるカロリンスカ研究所(スウェーデン)のMozhu Ding氏によると、尿酸とはプリン体が分解される際にできる物質であり、プリン体はアルコール、特にビール、赤身肉、内臓、ベーコン、イワシ、ニシン、ホタテ貝、ムール貝などの食品に大量に含まれているという。尿酸値が高い状態「高尿酸血症」は、痛風、つまり痛みを伴う発作性の関節炎、および腎臓結石と関連があることがよく知られている。しかしそれだけではなく、高尿酸血症によって、高血圧、糖尿病、心臓病のリスクが上昇する可能性を示す研究結果も報告されている。また最近の研究から、高尿酸血症と心房細動の関連も示唆されている。ただし、高尿酸血症が直接的に心房細動のリスクを高めるのか、そうではなく、尿酸値は単にマーカーに過ぎないのかは明らかでない。
心房細動を患っている米国成人は2010年の時点で約520万人であり、2030年までに約1210万人に達すると予測されている。また、心房細動は高齢者に最もよく見られるタイプの不整脈であり、その有病率は米国に限らず世界的に増加している。本研究には関与していない、米ウェイクフォレスト大学のElsayed Soliman氏は、「加齢、男性、喫煙、肥満、高血圧、高コレステロール血症、2型糖尿病などの従来から知られている心血管疾患リスク因子のみでは、心房細動の発症リスク上昇を十分に説明できず、他のリスク因子の探索が重要」と話している。
今回報告された研究では、1985~1996年に募集された30~60歳で心血管疾患の既往のないスウェーデンの一般住民33万9,604人を対象として、平均26年間追跡した。尿酸値の高さで参加者を4群に分類すると、尿酸値が高いほど心房細動のリスクが高いことが明らかになった。全体として、尿酸値が最も高い上位25%の群は、尿酸値が最も低い下位25%の群よりも45%ハイリスクだった。
このような関係は、追跡期間中に高血圧や糖尿病、冠動脈性心疾患、心不全を発症しなかった人でも認められた。Ding氏によると、高尿酸血症のみでも心房細動のリスクが上昇する可能性を示した研究は、本研究が初めてだという。「この結果は、尿酸が心血管代謝を介する機序によって心房細動のリスクと関連するだけでなく、ほかのメカニズムを介して心房細動の発症に直接影響を与え得ることを意味するものだ。そのメカニズムの特定にはさらなる研究が必要だが、炎症が関与している可能性がある」と同氏は述べている。
なお、本研究において、追跡期間中に高血圧や糖尿病、冠動脈性心疾患、心不全を発症した人は、尿酸値の高低にかかわりなく、心房細動の発症リスクが高かった。
このテーマに関する研究の次のステップについてSoliman氏は、「尿酸値を下げることが心房細動のリスクを軽減するのに役立つかどうかを明らかにすることだ」としている。また、「アルコールやプリン体が豊富な食品の摂取を減らしたり、尿酸降下薬によって尿酸値を下げることが可能だが、心房細動の予防という目的のためにそのような治療を行う意義があるのかという疑問が、新たに提示された」と、本研究の影響を解説している。
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