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過呼吸により生じる体内CO2濃度変化が皮膚温度感覚に及ぼす影響を解明-筑波大ほか

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2023年01月18日 AM10:37

 

過換気中、皮膚表面の痛み刺激を感じにくくなるのはなぜか

筑波大学は1月13日、過換気によって生じる体内の二酸化炭素(CO2)濃度の変化が皮膚温度感覚に及ぼす影響について検討した結果を発表した。この研究は、同大体育系の西保岳教授、新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科の藤本知臣講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ヒトは恐怖や痛み、急激な温度変化などにさらされると過換気()に陥ることがある。過換気中には皮膚表面の痛み刺激を感じにくくなることから、外的ストレスの軽減が過換気の生理学的意義の一つではないかと考えられている。しかし、過換気が皮膚感覚を弱める生理学的なメカニズムについては明らかになっていなかった。

研究グループは、過換気によって変化する体内のCO2濃度に着目した。過換気時には、体内のCO2が過剰に排出され、低二酸化炭素血症に陥る場合があるからだ。しかし、低二酸化炭素血症が皮膚感覚を弱めるかどうかは明らかではなかった。また、皮膚感覚の中でも温度感覚は体温変化から身体を守るための行動性体温調節反応を引き起こす重要な感覚であるが、過換気によって皮膚の温度感覚も弱まるかどうかは明らかではなかった。そこで研究では、過換気が皮膚感覚を弱めるメカニズムを解明するために、低二酸化炭素血症の有無と皮膚温度感覚との関係について検討した。

体内CO2を過剰排出/維持した条件での皮膚温度感覚変化を測定

研究グループは、15人の若年成人(男性12人、女性3人、26±3歳)を対象とし、前腕部と前額部において皮膚温度感覚を測定した。実験では、通常の呼吸時(Control条件)の測定を行った後、過換気によって体内のCO2濃度を低下させた場合(HH条件)と、過換気を行いながらCO2を吸入することで体内のCO2濃度を維持した場合(NH条件)のそれぞれについて測定を行った。

いずれの測定も皮膚温冷覚閾値測定装置を用い、測定部皮膚温と同じ温度に設定した測定装置のプローブを前腕部もしくは前額部に押し当て、プローブの温度を徐々に上昇もしくは低下させた。研究対象者は、温かさや冷たさを感じた時点でボタンを押し、その時点のプローブの温度を測定。測定開始時の皮膚温と、温かさや冷たさを感じた時のプローブの温度との温度差を皮膚温度感覚の指標として用いた。

過剰排出された場合のみ、皮膚温度変化を感じにくく

その結果、皮膚温度感覚は体内のCO2濃度(正確には呼気終末二酸化炭素分圧)が低下した場合にのみ鈍くなり、より大きな温度変化が生じなければ温かさや冷たさを感じなくなることがわかった。その一方、過換気中に体内のCO2濃度を維持した場合の皮膚温度感覚は、通常呼吸時と差がみられなかった。これらの結果から、過換気による皮膚感覚の鈍化には、過換気自体ではなく、過換気による体内のCO2濃度の低下が関連していると考えられた。

大きな体温変化による過換気が皮膚感覚を鈍らせ、熱中症や低体温症発生を助長の可能性

研究の結果は、過換気による体内のCO2濃度の低下が皮膚感覚の鈍化に関連していることを示唆している。皮膚温度感覚の鈍化は、行動性の体温調節反応の減弱につながる。夏の暑熱下での生活・運動や冬の水難事故など、大きな体温変化によって起こる過換気は「暑い」や「寒い」といった感覚を鈍らせ、熱中症や低体温症体温発生を助長している可能性がある。

「CO2濃度の低下が皮膚の温度を感じる経路のどの部分(皮膚からの情報伝達、もしくは脳内での処理など)に影響を及ぼしているかはまだ明らかになっていない。今後は、過換気による体内のCO2濃度の低下と皮膚刺激時の神経活動などを検討していくことで、より詳細なメカニズムの解明につながると考えられる」と、研究グループは述べている。

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