2021年の調査で中学生の13%〜22%に中等度以上の抑うつ症状
国立成育医療研究センター研究所は1月12日、2001年に生まれた子どもの家庭を対象に、乳児期における父親の育児への関わりが、子どもが16歳時点でのメンタルヘルスの不調とどのように関連しているのかを分析し、その結果を発表した。この研究は、同センター社会医学研究部の加藤承彦室長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Affective Disorders」に掲載されている。
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思春期の子どものメンタルヘルスの問題は先進諸国に共通する大きな課題になっている。 日本においても、コロナ禍における子どものメンタルヘルスの不調が懸念されている。同センターが2021年12月に実施した調査では、小学5~6年生の9%~13%、中学生の13%〜22%に、中等度以上の抑うつ症状がみられた。親子関係は思春期の子どものメンタルヘルスに大きく影響する。海外の先進国(イギリス)では、幼少期の父親の育児への関わりが、子どものメンタルヘルスに与える長期的な影響の研究がいくつか実施されているが、結果は一致していない。また、アジア圏では、このような研究はこれまで実施されていない。
父親の育児への関わりが多い群で、子のメンタルヘルスの不調リスクが10%低い
研究グループは、厚生労働省および文部科学省が実施している21世紀出生児縦断調査の2001年コホートを用い、分析を行った。対象は、2001年に生まれた日本全国の1万8,510 人の子どもがいる世帯で、父親の育児への関わり(「おむつを取り換える」「入浴させる」など)の程度を最も少ない群から多い群まで4群に分けて、それぞれの群における16歳時点での子どものメンタルヘルスの状況を比較した。
その結果、最も関わりが少ない群と比較して、最も多い群では、メンタルヘルスの不調のリスクが10%下がっていた。この結果から、乳児期における父親の育児への関わりが多いことが、長期的に子どものメンタルヘルスの不調を予防する可能性が示唆された。
父親の育児休業取得推進の義務化などは好影響をもたらす可能性
性別役割分業が一般的だった日本においても、父親の育児休業取得推進の義務化など父親が積極的に育児に関わることが推奨される社会になりつつある。研究から得られた知見は、そういった日本社会の変化が子どもの成長にとって好ましい影響をもたらす可能性を示唆している。「ただし、今回用いたデータは、2001 年時点での父親の育児への関わりであり、今後より新しいデータを用いて検証する必要がある」と研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター研究所 プレスリリース