ガイドラインは、自動車の運転技能に及ぼす向精神薬の影響を検討し、適切な注意喚起を行うことが狙い。患者の安全を守ると共に、適切な治療薬が提供されることにより、症状の悪化や再発防止を目指すため作成された。新薬の開発時だけでなく、既承認薬を評価する場合も参考にすることを推奨している。
自動車運転に関連する機能として、▽覚醒機能▽感覚機能▽認知機能▽精神運動機能――を挙げ、非臨床試験や臨床薬理試験等の開発早期の試験で各機能に及ぼす影響を高い感度で評価し、シグナル検出を行う必要があるとした。その際、治験薬の薬理学的作用等を考慮して、評価する機能を合理的に選ぶ必要があるとした。
非臨床試験では、特に薬理試験において、運転に関連する機能と関係する可能性のある神経伝達物質の受容体、トランスポーター等に対する治験薬や代謝物の作用について検討する。
臨床薬理試験における具体的な評価方法として、覚醒機能はVASやエップワース眠気尺度等、感覚機能は平衡機能検査等、認知機能は持続注意課題や符号課題等の神経心理学的検査等を挙げた。
その後の探索的試験、検証的試験、長期投与試験では、自動車の運転技能に及ぼす有害事象の発現時期や持続期間などの時間的関係を検討することとし、夜間に投与する睡眠薬等を投与する場合は翌日への持ち越し効果の評価を行うなど、治験薬により適切な観察時期を設定することが重要とした。
また、非臨床試験や臨床試験等で集積された情報から運転技能への影響が示唆される場合には「自動車運転試験」を実施することとし、必要性について臨床開発早期の段階で規制当局と相談することが望ましいとした。運転試験は、実車またはシミュレーターを用いて治験薬の自動車の運転技能に及ぼす影響をより高い特異度で評価することを目的としている。
主要評価項目は、関連機能のうち最も影響が大きいと考えられる機能との関連性がある評価指標を設定する必要があるとした。