285名対象、後遺症のアンケート調査を実施
大阪公立大学は1月11日、新型コロナウイルス感染の後遺症に関して285名を対象にアンケート調査を実施した結果、感染後約1年経過後も半数以上の人に後遺症状が残っていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科臨床感染制御学の井本和紀病院講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではさまざまな後遺症状が残ることが、主に海外から報告されている。後遺症は実に多岐にわたり、咳や体のだるさが残るだけではなく、記憶力や集中力が低下することもある。さらに、精神的な不調や神経の障害も起こるため、日常生活に大きな影響を与える可能性がある。しかし、日本では詳細なCOVID-19の後遺症に関する調査があまり進んでおらず、後遺症を診察するとともに、後遺症について研究を行っている医師はほとんどいない。
今回の研究では、大阪の5つの病院(大阪公立大学医学部附属病院、大阪市立十三市民病院、大野記念病院、旧:阪和第二病院、ベルランド総合病院)で2020年1月1日~2020年12月31日の間にCOVID-19と診断された人、もしくは各病院に入院した人(計285名)を対象に、新型コロナウイルスの感染後約1年後の後遺症に関するアンケート調査を実施。アンケートでは、『COVID-19の後遺症がどのような症状で、どれくらいの人に残っているのか』『それによってどれくらい生活が影響を受けているのか』『どのような人が、後遺症が残りやすいのか』について調査した。
生活に大きな影響を与える後遺症、倦怠感、抜け毛、集中力・記憶力・嗅覚の異常、睡眠障害など
調査の結果、対象者のうち半数以上(56%)の人に、少なくとも1つ以上の後遺症状が残っていることが明らかとなった。後遺症状について、比較的軽症の人(無症状者・軽症者)では、倦怠感や抜け毛、集中力・記憶力の異常、睡眠障害が多く残っており(10%以上)、比較的重症の人(中等症~重症)では、倦怠感、呼吸困難感(息がしづらくなる感じ)、味覚障害、抜け毛、集中力の異常、記憶力の異常、睡眠障害、関節の痛み、頭痛が多く残っていたことが明らかになった(10%以上)。
また、生活に大きな影響を与えている後遺症としては、倦怠感、喀痰(痰が多くでること)、呼吸困難感、嗅覚の異常、抜け毛、集中力や記憶力の異常、睡眠障害、関節の痛み、眼の充血、下痢があった。これらの症状が、常に気になるほど残っていることで生活の質が低下している人が多くいることがわかった。
重症化リスク「低」の人でも後遺症が残る可能性あり、感染に注意を
次に、どのような人で後遺症が残りやすいかを検討するため、後遺症状と危険因子(患者の背景・持病・血液検査値)についてロジスティック回帰分析を実施。その結果、新型コロナウイルスに感染した際の重症度と、喀痰、胸痛、呼吸困難感、咽頭痛、下痢などが非常に強く関連していることがわかった。新型コロナウイルスに感染した際の重症度と関係なく残る後遺症として、倦怠感や味覚・嗅覚の異常、抜け毛、睡眠障害があった。
今回の研究結果より、若年層やワクチンをすでに接種している人、過去に新型コロナウイルスに感染しており重症化する可能性が低い人でも、後遺症が残る可能性があり、感染に注意が必要だと言えるとしている。
COVID-19後遺症、引き続き注意を
新型コロナウイルスオミクロン株では、重症化する可能性は低いとされている。また、一部の報告では、これまでに流行した株と比較すると後遺症が少ないとも言われている。しかし、同研究により、重症度と関係なく残りやすい症状があることが明らかとなったことから、今後もCOVID-19の後遺症については引き続き注意が必要だと言える。
大阪公立大学医学部附属病院では、COVID-19後遺症専門外来を2021年2月に立ち上げている。現状では後遺症の治療法が確立されているわけではないため、これからも研究を継続していく必要があると考えている、と研究グループは述べている。
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・大阪公立大学 プレスリリース