月経随伴症状に対する有効な予防策の構築へ
筑波大学は1月11日、月経随伴症状の有無および重症度に関連する要因について検討された論文を検索し、解析した結果を発表した。この研究は、同大体育系の中田由夫准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されている。
女性の体内では、月経初日から次の月経の前日までの月経周期において、女性ホルモンの著しい変動と出血を伴うことから、身体にさまざまな変化が生じる。これに伴う精神的・身体的な症状は、多くの女性が抱える健康課題の一つとなっている。
月経中に発現する月経困難症と、月経前に発現する月経前症候群を総称した「月経随伴症状」は、月経を有する若年女性の約90%に発現し、そのうち約30%は日常生活にも影響を及ぼすことが報告されている。従って、これを改善することは、女性の生活の質の向上につながると期待される。
月経随伴症状の有無や重症度に関連する要因は複雑に絡み合っている。しかし、これまでの研究は、それぞれが独立した報告にとどまっており、有効な予防策の構築には至っていない。そのため、これらの知見を総合的に分析し、症状の有無と重症度に関連する要因について整理する必要がある。
月経随伴症状に関連する論文を精査し、メタ解析
研究ではまず、2つの論文検索データベース(PubMed・医中誌)を用いて、2021年1月までに発表された月経随伴症状の有無および重症度に関連する要因について検討された論文を、システマティックレビューにより検索した。1,479件の論文が見つかり、これらについて、1次スクリーニングとして論文の表題と要約を精査し、1,109件の論文を除外、残った370件の論文の本文を、2次スクリーニングとして精読して、238件の論文を除外し、131件の論文を得た。その後、各論文の研究の質を、Jonna Briggs Institute critical appraisal checklists tool(JBI)により評価し、JBIスコア≧50%の論文を選択した。これにより、131件の論文のうち77件が最終的な分析対象となった。これら77件の論文から、月経随伴症状の有無および重症度に関連する要因として、身体特性、月経特性、生活習慣のデータを抽出し、メタ解析を行った。
20歳以上、BMI18.5未満、ストレスレベルが高いなど月経困難症の発現要因
分析の結果、月経困難症が発現する要因として、20歳以上であること、BMI(体格指数)が18.5未満であること、月経期間が長いこと、月経周期が不規則であること、月経随伴症状の家族歴があること、ストレスレベルが高いこと、睡眠時間が7時間未満であること、就寝時間が23時01分以降であること、を見出した。また、月経困難症の重症度は、BMIが18.5未満であること、喫煙習慣があることと関連することが示唆された。さらに、月経前症候群の有無には喫煙習慣が影響していることがわかった。
「研究で確認された関連要因のうち、修正可能な要因を改善することで、月経随伴症状の発現や重症度が抑えられると考えられることから、さらなる検討により、女性の健康支援に役立つ知見が得られると期待される」と、研究グループは述べている。
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・筑波大学 TSUKUBA JOURNAL