腸内細菌叢移植の効果を高めるため、移植前に3種類の抗菌薬の投与を追加
順天堂大学は1月4日、メタジェンセラピューティクス株式会社との共同研究講座で計画している臨床研究「活動期潰瘍性大腸炎患者を対象とする抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」について、順天堂大学医学部附属順天堂医院が先進医療Bとして厚生労働省へ届出を行い、承認されたことを発表した。
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潰瘍性大腸炎は国内で最も患者数の多い指定難病で、患者数は20万人以上と推定されている。毎年増加傾向にあり、近年は新規薬物療法の登場で治療効果が飛躍的に向上したものの、長期予後については不透明で、副作用についても課題となっている。また、腸内細菌叢の乱れが発症や増悪の要因の一つであることが明らかになってきている。
抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法(Antibiotic Fecal Microbiota Transplantation療法:A-FMT療法)は、患者の乱れた腸内環境を改善するため、3種類の抗菌薬(アモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾール)を用いて腸内細菌叢をリセットした後、健康なドナーの便から作成した腸内細菌叢溶液を内視鏡により注入し、バランスのとれた腸内細菌叢を構築する医療技術。以前より行われてきた腸内細菌叢移植の前に抗菌薬の投与を追加することで、より効果的な腸内細菌叢移植となることを目指している。
210人以上の潰瘍性大腸炎患者と160人以上の便ドナーが臨床研究に参加、標準治療化目指す
「腸内細菌叢移植」は、感染性腸炎に対する治療法として欧米ではすでに実用化されており、潰瘍性大腸炎についても副作用の少ない治療法として近年注目されている。
順天堂大学における潰瘍性大腸炎に対するA-FMT療法の臨床研究では、2014年6月の研究開始以来、2022年12月までに210人以上の潰瘍性大腸炎患者と、160人以上の便ドナーが参加した。今後は先進医療として同医療技術の有効性や安全性を検討し、標準治療化を目指して研究を進めていくとしている。
2023年1月より順天堂大学医学部附属順天堂医院で開始
A-FMT療法の実施には、便ドナーと患者をつなぎ、安全かつ安定した腸内細菌叢溶液の作成を可能とする「腸内細菌叢バンク」の構築が不可欠だ。順天堂大学とメタジェンセラピューティクスは、腸内細菌叢移植の基礎臨床的解明と臨床応用を目的とした共同研究や、標準化された腸内細菌叢溶液の作成・管理に関する共同研究を実施し、体制構築を進めてきたが、今後も安全で安定した腸内細菌叢溶液の作成に向け、さらなる研究に取り組む。
なお、同先進医療は2023年1月より順天堂大学医学部附属順天堂医院で開始され、メタジェンセラピューティクスは共同研究機関として、便ドナーのリクルーティング、便検体の管理、腸内細菌叢溶液の調製、品質管理などに係る支援業務を提供する。
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