本態性高血圧症モデルの自然発症高血圧ラットで
香川大学は12月27日、本態性高血圧症のモデルの自然発症高血圧ラット(SHR)を用いて、腎臓-皮膚連関の観点から新たな高血圧の発症機序を発見したと発表した。この研究は、同大医学部薬理学所属の医学部医学科4年生の小倉卓浩氏、西山成教授ら、デューク-シンガポール国立大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Hypertension Research誌」に掲載されている。
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日本人の3人に1人が罹患しているとされる高血圧症は、脳卒中・心不全・腎臓病などを発症する原因として最も重要とされている。しかし、ほとんどの高血圧症は「本態性高血圧症」と呼ばれ、発症メカニズムが明らかになっていない。
腎臓は尿を作って体内の電解質や水分量を調節し、血圧をコントロールしている。これまでは腎臓の機能が低下すると高血圧が発症すると考えられてきたが、その詳細なメカニズムは不明だった。一方で皮膚も不感蒸泄(経皮水分蒸散)や発汗を介して体液量に影響を与えることが知られている。
皮膚血管収縮が血圧を上昇させる
今回の研究では、腎臓と皮膚による電解質・体液制御機構が関与する高血圧発症メカニズムを世界で初めて明らかにした。SHRでは腎臓の尿を濃縮する能力(水再吸収力)が低下しており、尿量(水排泄量)が増加して体液喪失が生じていることが見出された。この体液喪失を補うために皮膚の電解質蓄積と血管収縮を生じ、皮膚からの水分喪失を抑制して体内の水分量を維持していることが明らかとなった。
また、この過程で生じた皮膚血管収縮が血圧を上昇させる要因であることを証明。これらの研究結果は、本態性高血圧症の発症機序の解明につながるものだとしている。
新たな高血圧予防・治療法の開発へ期待
今回の研究では、SHRで腎臓からの水分喪失とそれを補うために生じる皮膚の体液保持が高血圧を発症させる原因であること新たに提唱した。将来的に、ヒトの本態性高血圧患者でも同様のメカニズムの存在を証明できれば、新しい高血圧の予防・治療法の開発へつながることが期待される、と研究グループは述べている。
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