2009年1月~2020年12月の全国のレセプトデータを解析
大阪大学は12月15日、長期間にわたる同一のデータセットを用いて、東日本大震災での原子力発電所の事故による福島県における一連の災害(以後、福島災害)および新型コロナウイルス感染症(以後、新型コロナ)禍前後における、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、精神疾患の有病率の変化を解析し、福島災害や新型コロナ禍後、これらの疾病の有病率が増加したことがわかったと発表した。この研究は、同大感染症総合教育研究拠点の村上道夫特任教授(常勤)らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Disaster Risk Reduction」に掲載されている。
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これまで、福島災害や新型コロナ禍後に、避難や行動制限といった規制措置にともなって、糖尿病のような生活習慣病や精神疾患といった心身への影響が生じることが知られていた。しかし、福島災害と新型コロナ禍といった複数の災害・パンデミックを対象に、同一のデータセットを用いて、このような二次的な健康影響がどのように発生しているのか、これらの影響が顕著に生じる性別・年齢階層は何かを評価した研究はなかった。そこで、研究グループは、JMDC社から提供を受けた2009年1月~2020年12月までの全国のレセプトデータを解析し、福島災害や新型コロナ禍前後における、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、精神疾患の有病率の変化を評価した。
精神疾患の有病率が福島県浜通り地域において増加
その結果、福島災害後9年間にわたって高血圧症、脂質異常症、糖尿病の有病率が福島県全域で増加すること、精神疾患の有病率が福島県浜通り地域において増加することがわかった。また、新型コロナ禍後においては、日本全体でこれらの疾病の有病率が増加していた。
福島災害と新型コロナ禍で影響の生じた性別・年齢階層が異なる
顕著な有病率の増加が生じた性別年齢階層は、福島災害では女性の40~74歳であったのに対し、新型コロナ禍後では男性の0~39歳であり、福島災害と新型コロナ禍で影響の生じた性別・年齢階層が異なることが明らかになった。
災害やパンデミックの特性を考慮した健康支援が必要
研究成果により、災害やパンデミック後において、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、精神疾患といった二次的健康影響が生じることが明らかとなった。災害やパンデミック後において、このような二次的健康影響を考慮することの必要性を示している。「そういった影響が生じやすい性別・年齢階層が災害やパンデミックによって異なったことから、災害やパンデミックの特性に応じて健康支援を行うことが重要」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU