同製品は、不眠障害の治療を目的に認知行動療法を行う。寝付きの悪い入眠障害、眠りが浅く途中で何度も目覚める中途覚醒、早朝に目覚める早朝覚醒などを含む不眠障害に対し、アプリを用いて認知行動療法を取り入れることで、患者の行動変容を促して寝付きや睡眠の質を改善する。
患者がスマートフォンでアプリをインストールし、医療機関から提供されるアプリをライセンス認証する。医師は1週間、睡眠衛生指導などを実施し、必要に応じて治療の要否を確認する。
その後、患者が8週間かけて毎日朝と夜に睡眠や生活習慣の振り返りを入力し、週に1回不眠の状態を測る「アテネ不眠尺度(AIS)」で不眠がどの程度改善しているかテストを行い、その結果に基づき就寝と起床時間の目標の再設定を行う流れとなる。
アプリを使用する9週間は、必ずしも対面による医師の診察を受ける必要はない。症状に応じて薬物治療を並行して行うこともあるが、アプリ単体の治療も想定している。
不眠障害の治療を必要とする20歳以上の患者を対象とした国内臨床試験では、アプリ使用群と治療機能を除いたソフトウェア使用群を比較したところ、治療開始後8週目のAIS治療開始時からの変化量に有意差が見られ、アプリの優越性が示された。
承認条件として、不眠障害や認知行動療法に関する十分な知識を持つ医師がアプリの提供する機能を習得した上で使用することとしている。
委員から「あくまでも治療補助、支援の役割が大きいので、販売名や使用目的を治療用をメインとする書き方から変更した方が適切ではないか」との指摘があったため、厚労省は販売名と使用目的・効果について再検討を行い、部会で改めて了承を得る予定。
不眠障害の治療は、睡眠薬を用いた薬物療法が一般的となっているが、ふらつきや転倒、頭痛などの身体症状に加え、併用薬との薬物相互作用や薬物依存の原因となることが指摘され、必要最低限の使用が求められている。
米国や欧州のガイドラインでは認知行動療法が治療の第一選択として推奨され、英国では治療用アプリを用いた不眠障害治療が推奨されている。
日本のガイドラインでも薬物療法と同時にできるだけ早期に認知行動療法等の心理的、行動的介入が推奨されているが、保険適用されていないなどの理由から普及が進んでいないのが現状。治療用アプリの登場で睡眠薬の使用量を減らし、新たな治療選択肢を提供できる可能性がある。